「世界のCSV(※1)先進企業」を目指し、環境や健康、コミュニティーなどの領域における社会課題の解決をビジネスのリターンに結び付けているキリンホールディングス様。
ビジネスパーソンに向けてCSV経営の理念や具体的な取り組みを発信するために、長期にわたって『週刊東洋経済』の巻頭連載タイアップ「Business ASPECT」および「東洋経済オンライン」での「誌面転載」(以下、東洋経済)で記事広告を活用されています。
CSV経営の実践に至った背景や、メディア戦略で東洋経済を活用されている狙いについて、キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部シニアアドバイザーの藤原啓一郎様に伺いました。
※1 Creating Shared Value(共通価値の創造):社会課題への取り組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により企業価値向上を実現すること
キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部シニアアドバイザー 藤原啓一郎様
CSV経営の契機になった、東日本大震災での経験
――貴社は、2013年からCSV経営に舵を切られています。その経緯についてお聞かせください。
当社は、かねてCSR(※2)に注力していました。しかし、CSRはあくまでも事業で得た利益の一部を活用して実施する取り組みです。継続性や事業との直接的な関連性に乏しいことを懸念していました。そこで、磯崎(現社長)がキリンホールディングスの代表取締役社長に就任した際に、CSV経営を掲げることを決断しました。
※2 Corporate Social Responsibility(企業が果たすべき社会的責任):企業が経済的な利益を追求するだけでなく、社会的・環境的な影響を考慮し、持続可能な開発や社会全体への配慮を行うことを指す
――きっかけとなる出来事があったのでしょうか。
東日本大震災が弊社のCSVの原点です。震災の際、キリンビール仙台工場が津波で甚大な被害を受けたのです。「これを元に戻すのは厳しいだろう」と、私も含めて社内の誰しもが覚悟したと思います。ただ、仙台工場は地域で親しまれていた工場だったため、震災に起因した撤退となると、被災地の皆様も残念に思われることは想像にかたくありませんでした。
経営層の中でもさまざまな議論はあったと聞いていますが、最後には「その場所で価値を生み出し続けることに意味がある」という結論に至り、存続を決断しました。その後、技術者含めて全社的に奮闘した結果、9ヵ月という短期間で仙台工場の復旧を実現。被災地の皆様からは、とても勇気づけられたという声が寄せられたと聞いています。
再建には約50億円を要したので、合理的な経営判断をするならば、撤退を選択してもおかしな状態ではないといえます。しかし、深刻な災害で苦しんでいる被災地で価値を生み続けることこそが、われわれが事業を営む本質的な意味だろうということで、経営層の方向性が合致しました。ちなみに、当時CSRの担当役員として復興を強く主張したのが、現在の社長である磯崎だったと聞いています。このときの経験が、後のCSV経営の原点にあるようです。
若年層を中心に受け入れられているCSV経営の理念
当社のCSV経営は、「酒類メーカーとしての責任」を前提に、各事業の活動を通して「健康」「コミュニティー」「環境」の社会課題に取り組むことを指針にしています。
当社は酒類メーカーの責任として、アルコールの有害摂取を根絶し、次世代にお酒の文化を継承していきたいと考えています。そのうえで、医薬やバイオケミカル事業を擁する強みを生かし、健康に好影響をもたらす研究開発や商品化を進めています。実は30年以上前から医薬品と食品をつなぐ研究に注力しており、とくに「プラズマ乳酸菌」は、一つの大きな成果です。
また、飲むという行為が人と人のつながりを創出することから、商品やサービスを通じて、コミュニティーの醸成に寄与したいと考えています。そして環境については、比較的早い段階からプラスチック容器の問題に対して積極的に取り組んでおり、その蓄積をベースに持続可能な地球環境を次世代につなげるための活動を継続させています。
――CSV経営を推進されて、今年で10年目を迎えられます。この間に、変化を感じられた部分はございますか?
若手社員の意識に変化を感じます。近年、学校教育や企業活動において、SDGsが当たり前になっているためか、あえてCSV経営の必要性を啓発するまでもなく、その理念を理解しているように見えます。学校でSDGsを習っていない30代前半の従業員にも、この傾向は見られます。弊社に限ったことではないと思いますが、サスティナビリティーやSDGsに関わる仕事ができることを条件に就職活動をする学生が増えていると聞いています。
CSV経営をしている企業の商品が消費者に選ばれるという状況にはなかなか遠いものの、今の10代、20代にとってサスティナビリティーは当然であり、環境に配慮した商品を選ぶ傾向が高まってきているという話もあります。若年層が年齢を重ねることで、変化の可能性があると見ています。
東洋経済を通じてビジネスパーソンに訴求
――CSV経営を体現した取り組みに関して、2017年から東洋経済の記事広告でコンスタントに発信されています。この手法を採用された狙いについて、ご説明いただけますでしょうか。
CSV経営関連の情報発信について、コーポレートページは完全に長期投資家向けに構築していますが、さらにブランド価値を高めるために長期投資家の次の訴求ターゲットをビジネスパーソンに設定しました。ビジネスパーソンは、アンケート調査でも比較的主体的な意見を寄せてくれることが多いので、フィードバックを得られる相手という意味でも重視した形です。
ビジネスパーソンに向けた情報発信をするに当たり、CSV経営に関連する活動を一言で説明することが難しいという問題があります。SNSなどの短文では、イメージは伝えられても、本質まで伝えきることができません。理念や背景をしっかりとまとめた文章を読んでもらえば、共感し、深く理解いただける活動レベルにあると思いますが、長い文章を読んでもらう時間をビジネスパーソンに持ってもらうことは大変に難しい状況です。
こうした状況を踏まえてメディアを選定した結果、おのずと東洋経済に絞られました。最初は、いくつかのメディアに出稿して比較したのですが、東洋経済がいちばんフィットしていると感じました。
――フィットしていると感じられたのは、なぜでしょうか。
東洋経済の読者層は、われわれが訴求したいビジネスパーソン像にかなり近いからです。アンケートへの回答を見ても、記事をしっかりと読んでくれているのは、東洋経済の読者でした。こちらが投げかけたときに、期待するフィードバックをくれる存在が東洋経済の読者に多いことがわかったので、フィットしていると感じました。
また、当社のCSV経営関連のコンテクストを伝えるうえで、東洋経済の記事のボリュームは最適です。長すぎず短すぎない長さなので、ちょっとした隙間時間に読めますし、頭に入りやすいと思います。
社員や事業に好影響をもたらす東洋経済読者の反響
東洋経済やターゲットであるビジネスパーソンの特性を踏まえて、興味を引くテーマ、理解しやすいテーマは何だろうと考えながらテーマを選んでいます。具体的には、読者の身近な生活に根差していること、消費者目線に立ったときに手触り感があること、わかりやすいことを重視しています。
――東洋経済の読者からのフィードバックは、貴社にどのような好影響をもたらすとお考えでしょうか。
ポジティブ・ネガティブ問わず、意見や感想をいただけること自体、とてもありがたいことです。というのも、社会課題に対する取り組みは、一般消費者にアンケートを取っても、なかなか反響を得られません。その意味でも、東洋経済の読者からの反響はとても参考になっています。
また、読者の意識の変化を追えるのもメリットです。例えば、記事広告をスタートした初期は、SDGsに注釈を入れていましたが、現在はその必要がないほど理解が広がっています。記事の内容についても、年々レベルを上げていますが、アンケートを読むと読者はしっかりと理解してくれています。このようにビジネスパーソンの意識変化や理解の度合いを把握できる点にも価値を感じています。
――今後、東洋経済に期待していることはありますか?
実は、ビジネスパーソンにしっかりと響く記事を配信しているメディアは少ないと思っています。東洋経済で発信される記事の中身や質は安定していますし、読者から厚い信頼を得ていると思います。東洋経済に現在のビジネスパーソンを主要ターゲットとする路線を継続していただけるようであれば、これからもビジネスパーソンとのエンゲージメントの場として活用していきたいと思っています。
東洋経済の営業担当者の方は、当社のことをとてもよく理解し、ライターの方にも毎回質の高い記事を執筆していただいていると思います。今後も、東洋経済の知見を生かした記事内容や配信のタイミングなどへの積極的な提案を期待しています。