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激変するメディア環境と東洋経済オンラインの「これから」

激変するメディア環境と東洋経済オンラインの「これから」激変するメディア環境と東洋経済オンラインの「これから」
  • 社員インタビュー
 オンラインメディアを取り巻く環境はここ数年で激変しています。広告主とメディアの関係性も変わっていく中で、「東洋経済オンライン」は今後どうなっていくのか。ビジネスプロモーション局デジタル業務推進部・松下智彦に聞きました。

もっとメディアは努力が必要

――自己紹介をお願いします。

  2001年に朝日新聞社に入社し、IT業界や金融業界の新聞広告営業を担当、その後デジタル広告のセールスや広告商品開発、メディア開発に取り組みました。とくに紙の新聞では見えずらかった読者の見える化にこだわり、顧客ID基盤の導入を進め、データを活用した広告商品の開発やオウンドメディアの運営に従事しました。その後、システム会社のBIPROGYにてデータ連携基盤の開発や運営に関わり、24年に東洋経済新報社に入社しました。

 現在は「東洋経済オンライン」や「会社四季報オンライン」に掲載するデジタル広告の進行管理や、記事広告の新指標開発などを進める一方、国内の有力コンテンツメディアが加盟する「クオリティメディアコンソーシアム」の活動として、デジタル広告を信頼できる環境で取引する共同広告配信プラットフォーム事業「MediaString」の啓発とセールスを進めています。

――オンラインメディアを取り巻く環境は大きく変わっています。とくにテキストメディアは数年前と比べて様変わりしていますが、率直にどう感じていますか?

 これまでインターネットの発展を支えてきたオープンウェブ(誰でも自由に情報の発信と閲覧ができる)が厳しい状態にあると思います。
 フェイク情報やSNSを使った詐欺も横行し、公序良俗に反するコンテンツも簡単に見つかります。ページを開けば、画面が広告で埋め尽くされているメディアもたくさんありますよね。そんなオープンウェブに自社の広告を掲載することに、当然広告主の皆様は慎重になるだろうと思います。自社のブランドや製品・サービスが毀損されてしまいますから。

 私が今思っていることは、メディアはそういった広告主の皆様の立場をちゃんと理解し、メディアの置かれた立場の説明も含めてちゃんとコミュニケーションできているか、という点です。小社のメディアである「東洋経済オンライン」を含め、新聞社や出版社でも多くのメディアがオープンウェブ上で記事や記事広告といったコンテンツを配信しビジネスをしているわけですが、社会に対して責任ある立場として、もっと広告主の方と会話しないといけないのではないかと思っています
 加えて、ユーザー体験の向上についてももっとメディア側の努力が必要だろうと思います。とくに今の若い方の中には、テキストではなくSNSやショート動画などでニュースを読む習慣がついている方が多くいらっしゃいますよね。そういったユーザーの情報取得の変化にも対応しなくてはなりません。また、広告を大量に掲載するなどして視認性や利便性を損なうことも横行しています。メディアは目先の利益にとらわれて、わざわざユーザーに嫌われるような体験を与えることで、自分の首を絞めてしまっていると思います。

 小社としては、まだまだ足りていない部分も多いですが、広告主の方との会話やユーザー体験の向上といった取り組みはほかのメディアさんに先駆けて行っています。その点はもっと多くの方々に知っていただく機会を増やさなくてはいけないとも思っています

 もう一つの懸念として、AIの発達で検索をする人自体が減っていますし、Google検索をして最初にヒットするAIの要約だけで満足してしまい、ウェブサイトに訪れないユーザーが増えています。ここはどのメディアも非常に苦労している点です。コストをかけて出している情報が、タダ同然で消費されているわけですから。この点に関しては、メディア同士が横で連携してプラットフォーマーに対抗する、PV(ページビュー)だけではない指標や評価軸を作るといった、1社だけではないメディア全体での取り組みが必要だろうと考えています

タイアップ広告の価値向上に貢献

――「東洋経済オンライン」は現在どのような状況でしょうか。

 「東洋経済オンライン」は2024年10月から動画事業に本格参入しました。現在は月に約20本のペースでYouTubeに動画をアップしています。動画編集長のポストが新設されるなど体制面も強化され、動画広告メニューも拡充されました。チャンネル登録者は順調に増えており、25年6月時点で20万人超となっています。

 これから「東洋経済オンライン」が進めていくことは、独自の会員組織である「東洋経済ID」を軸にして、よりユーザーの利便性を高めることです。東洋経済IDは「東洋経済オンライン」「四季報オンライン」「株式ウィークリーネット版」など小社が提供する情報サービスの共通IDです。今後も購読者向けの機能やコンテンツを更に充実させていく予定です。それと同時に、東洋経済IDをベースにした解像度の高いターゲティング広告メニューも発展させていきます。
 並行して「東洋経済オンライン」のリニューアルも進めていきます。時代に合わせ、情報が見つけやすいデザイン・UIにアップデートします。こちらは26年春ごろにリリース予定です。


――「東洋経済オンライン」は記事広告の出稿レポートの充実化に力を入れていますが、最近レポートの指標を新しくしましたよね。

 電通、博報堂、ADKマーケティング・ソリューションズの3社が立ち上げた「デジタルタイアップ価値証明プロジェクト」が進めるタイアップ広告のリポート指標統一に、小社としても協力しました。
 これはオンラインメディアのタイアップ広告のレポート指標が各社バラバラで、どのような効果だったのかを比較できないという課題から生じたプロジェクトです。例えばPVは、小社は1記事=1ページで掲載しているのですが、メディアによってはページを2~3ページに分割し、1記事を読み終わったら3PVと数えるメディアもありました。情報量としては同じなのですが、リポート上だと小社よりも多く読まれているように見えてしまいます。あとは、スクリーン遷移率や滞在時間といった指標もリポートに掲載されないメディアがありました。こういった状況から、業界全体で統一したリポートの基準が作られたのは、大きな一歩だと考えています。
 実は小社はレポートに関しては、以前から指標の健全化に積極的に取り組んでいました。これまで当社がやってきた取り組みが業界標準になったと認識しています。小社としてはこの分野の先駆者として業界を牽引し、課題であるPV以外の新たな評価指標の策定など、タイアップ広告の価値向上に貢献していきたいと思っています。

アドベリフィケーションの取り組みの強化

――信頼できる広告媒体を目指す取り組みとしてアドベリフィケーションにも取り組んでいます。

 現在、当社のアドベリフィケーションの取り組みは大きく分けて2種類あります。
 1つ目は、配信面の安全性の確認です。 IASさんのツールを活用し、ビューアビリティー計測を取り入れた純広告、PMP(プライベート・マーケット・プレース)のメニューを提供しています。無効トラフィックの計測機能(Botからの不正なトラフィックが実際どのくらいあるのか計測する)も必要に応じて活用しています。
 2つ目は、不適切な広告への対策です。GeoEdgeという広告監視ツールを導入し、不正広告や低品質広告などの不適切な広告を監視、ブロックしています。 対策を行っていても、日々さまざまな広告が配信される中で、どうしても不適切な広告が出てしまうことがあります。そのようなクリエーティブが見つかり次第、都度ブロックしています。

 このようなアドベリフィケーションへの取り組みが評価され、東洋経済新報社はJICDAQ(一般社団法人 デジタル広告品質認証機構)に 「無効トラフィック対策」「ブランドセーフティ」の2領域で第三者検証を受け、品質認証事業者として登録されました
 JICDAQは、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会、一般社団法人日本広告業協会、一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会の広告関係3団体が中心となり、デジタル広告の品質を第三者認証する機構です。現在はデジタル広告の品質課題のうち、「アドフラウドを含む無効トラフィックの除外」と「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」の品質認証に取り組んでいます。

質の高いコンテンツを生み出せる制作力がメディアの価値

――これから広告媒体としてのオンラインメディアはどのような点に価値があると考えられていますか?

 私はテキストベースのオンラインメディアには今後も揺るぎない強みがあると考えています。オンライン上にすぐさま配信でき、記録として残り続けるという特性は、これからも変わることはありません。生成AIもテキストなしに学習はできませんから。

 オンラインメディアならではの強みとして、コンテンツ分析の容易さもあります。広告効果の測定という観点からも、オンラインメディアではコンテンツへの反応を詳細に把握することができます。適切な分析は次のビジネス展開やコンテンツ制作の方向性を見つけ出すことができます。また、経済・ビジネス系メディアは検索エンジンでの高い表示順位が期待できますし、広告主のウェブサイト自体の価値向上やトラフィック増加にも貢献できます。
 速報的なニュースだけでなく、その時々の経済動向やビジネスのあり方を深く分析するコンテンツは、一朝一夕には作れません。それがメディアとしての価値であり、高いコンテンツ制作力を維持しながら広告との効果的な連携を図っていくことが、長い目で見て社会に対する価値になるだろうと考えています

――「東洋経済オンライン」は今後、どういった取り組みを強化していくつもりですか?

 私たちはすでに基礎的な指標による効果測定の仕組みは確立しています。しかし、これからはより本質的な価値の追求が必要です。例えば雑誌の編集者には、ある種のコピーライター的な素養があります。世の中を俯瞰的に見て、的確に評価できる力ですね。コピーライター以上に編集者の感性が光る場面も少なくありません。
 
「東洋経済オンライン」は意思決定層への強いリーチ力を持つメディアとして認知されていますが、今後はさらに踏み込んだ価値創造を目指さなくてはなりません。
 私たちが作り出すコンテンツは、クライアント企業のブランド価値向上や理解促進、さらには企業価値の向上にまで寄与できる可能性を秘めています。そのためには、単純なクリック数や到達数だけでない、新たな評価指標の確立が必要です。
 コンテンツの形態が多様化する中でも、その本質的な価値は変わりません。それがテキストであれ動画であれ、SNSでの展開であれ、質の高いコンテンツを生み出せる制作力こそが、メディアとしての真の価値になると考えています