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みんなで共有して使えるポスト・クッキー・テクノロジー「Unified ID 2.0」とは? The Trade Deskの担当者に聞いてみた

みんなで共有して使えるポスト・クッキー・テクノロジー「Unified ID 2.0」とは?  The Trade Deskの担当者に聞いてみたみんなで共有して使えるポスト・クッキー・テクノロジー「Unified ID 2.0」とは?  The Trade Deskの担当者に聞いてみた
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 プライバシー保護強化の流れを受け、Googleは2020年にサード・パーティ・クッキーを廃止する計画を発表しましたが、24年7月にこの方針を転換しました。しかしユーザーのプライバシーを保護しつつ、親和性の高い広告を表示する重要性は変わっていません。
現在、サード・パーティ・クッキーに代わるユーザー識別手段の技術がいくつも開発されていますが、その一つがThe Trade Deskの「Unified ID 2.0」(以下、UID2.0)です。「東洋経済オンライン」でも25年にUID2.0は正式導入されています。
媒体社と広告主の双方にメリットをもたらすというUID2.0について、The Trade Desk日本担当ゼネラルマネージャーの馬嶋慶様と、インベントリーディベロップメントディレクターの白井好典様にお話をうかがいました。


左:馬嶋 慶様 右:白井 好典様

誰でも無料で使えクロスチャネルで機能するUID2.0

――The Trade Deskとはどのような会社ですか。

馬嶋 当社は2009年にジェフ・グリーンとデイブ・ピクルスの2人が立ち上げたアドテクノロジー企業で、透明性が高く中立性のあるオープンインターネットの世界のリーダーになることをビジョンに掲げています。
現在のインターネット広告業界は、不均衡な状態にあると私たちは考えています。
高度なエンジニア力を持つ特定の企業が、自社アプリの中にユーザーを囲い込むエコシステムをつくり上げています。彼ら「ウォールドガーデン」勢力は広告主から多大な広告収益を得ています。その一方、「東洋経済オンライン」をはじめとするテキストメディアや動画メディアを含む「オープンインターネット」勢力の広告収益は、彼らを下回っています。しかし、ユーザーの平均滞在時間を見てみるとオープンインターネットのほうが長くなっています。広告収益と利用時間の「ねじれ」現象が生じているのです。

 オープンインターネット勢である新聞社・出版社などのパブリッシャーは、裏付けのある情報発信を行い、著作権が守られているコンテンツを保有していますが、圧倒的な技術力を前にウォールドガーデン勢に負けている現状があります。この問題に光を当て、ねじれを解消することがわれわれのミッションです。
また、サード・パーティ・クッキーをめぐる混乱は、大手テクノロジー企業への過度な依存が引き起こしている側面もあります。それに対してわれわれは、みんなが共有して使えるテクノロジーコンセプトをつくっていこうと考えています。その取り組みの一つとして、消費者のプライバシー保護と精度の高い広告配信の両立を図るソリューションがUID2.0です。

 

――UID2.0について解説をお願いします。

白井 個人情報保護が強化され、サード・パーティ・クッキーがなくなる潮流の中で、いかにユーザーに関連性の高い広告を表示していくかという課題を解決するために開発したのがUID2.0です。サード・パーティ・クッキーとは異なり、これは現在主要なブラウザーであるGoogle Chromeだけでなく、他のブラウザーやモバイルアプリ、CTV(コネクテッドTV)などをオープンインターネットを横断して使用できます。

 UID2.0の仕組みを説明します。
簡単に言うと、暗号化し安全性を担保した環境下で、パブリッシャーが保有するユーザーの個人情報から生成したIDと、広告主が保有するユーザーの個人情報から生成したIDを突き合わせ、マッチングしたユーザーがパブリッシャー側のサイトを訪れた際に広告を配信するという仕組みです。
 


技術的な点を詳しく説明します。
個人情報の第三者提供に同意したユーザーのメールアドレスあるいは電話番号は暗号化され、IDオペレーターと呼ばれる個人情報管理のサーバーに送られます。IDオペレーターは暗号化されたUID2トークン(パスワードの一種)をパブリッシャーに返します。パブリッシャーは受け取ったUID2トークンをSSP(サプライ・サイド・プラットフォーム)に送信します。UID2トークンはSSPからさらにDSP(ディマンド・サイド・プラットフォーム)に送信されます。
 


広告主側から見ていきます。
自社の保有する顧客のメールアドレスあるいは電話番号をIDオペレーターにアップロードします。すると暗号化され、UID2が生成されます。これをDSPにセットすると、DSPはUID2 Adminというサーバーに問い合わせ、復号鍵を入手します。そしてパブリッシャーから送られてきたUID2トークンを復号化し、UID2に変換します。最終的に、パブリッシャーと広告主のUID2を突き合わせ、適合すると広告が配信されるというわけです。
 


 UID2.0には4つの主要な特徴があります。
1つ目は、述べてきたとおり、安全かつプライバシーが配慮されている点です。
2つ目は、消費者に透明性とコントロールを提供している点です。あるサイトでユーザーがオプトアウトしたら、ほかのサイトでも全部オプトアウトされるようになっています。
3つ目は、オープンソースであることです。誰でも使えることができ、しかも無料で利用できます。これはほかのIDと大きく異なる点です。
そして4つ目が、運営管理の独立性です。現在UID2.0の運営管理は当社が行っていますが、最終的には中立的な組織に譲渡しようと考えています。

媒体社・広告主双方にもたらすメリットとは?

――UID2.0を活用するメリットを教えてください。また、普及の度合いはどうなっていますか。

白井 パブリッシャーにとっては広告在庫の価値が上がること、広告主にとっては広告出稿コストが下がることがUID2.0のメリットとして挙げられます。
実はパブリッシャーからSSPに届くビットリクエスト(入札依頼)の半分以上は、クッキーが入っていないものです。ということは、そのうちの全部ではありませんが、広告枠買い付けのオークションが発生しません。ところがUID2.0が入っている場合、広告主は空のビットリクエストがないため、結果として通常のキャンペーン予算よりはトータル予算で安く買うことができます。その分、1インプレッション当たりの単価は高くなるのですが、誰も買えなかったインプレッション枠が提供されることで、全体の効率がよくなると推測されます。

事例を挙げると、ウォルト・ディズニー傘下の「ナショナルジオグラフィック」ではUID2.0を活用して広告配信した場合、21%のメディアコストが削減されるとともに、ブランドのイメージが27ポイント改善され、ブランド好意度が14ポイント上昇したという結果が出ました。これはユーザーの興味・関心に近い広告が出ることが大きいと思います。また、日本のある大手プラットフォーマーでは、UID2.0の導入により買い付けインプレッションが67%、収益が47%の増加となりました。

UID2.0の普及状況としては、世界の中でも上位に入るくらい日本では普及が進んでいます。現在、日本中でIDを多く持っている主要パブリッシャー3社はすべて導入しているのをはじめ、ファースト・パーティー・データを多く持っていてメリットを感じる企業や新聞・雑誌社などが次々に導入しています。
 
――今後の展開について教えてください。

馬嶋 なるべく多くのパートナーを増やし、この分野の標準IDソリューションとして成長していきたいと考えています。また、技術革新で当社のDSPの中にUID2.0がAIと統合されているので、パーソナライズやクロスチャネル、計測配信等の機能を備えて進化していきます。
 現在生じているフェイクニュースの拡散や、個人の考えを偏らせるような情報の表示、知的財産権を守らない動画の増加といった問題が是正され、マネタイズされるべき情報やコンテンツにきちんと広告が出て、その収益によって知的財産権やジャーナリズムが守られ、持続的に発展する。そんなオープンインターネットのエコシステムをつくりたいと考えています。
編集後記

 馬嶋様がおっしゃっているように、米国のテック企業は、自社のエコシステムの中で効率化をとことん追求し莫大な利益を上げています。私の偏見になってしまうのですが、米国のテック企業は自社の利益の追求を最大価値に置き、地域社会や文化、教育への貢献には無関心なのではないかというイメージを持っていました。
しかし今回お話をお伺いし、The Trade Deskさんは社会の調和や倫理性といった、日本企業にも通じる利他的なカルチャーが根付いている点に強く印象を受けました。
 今回お話しいただいたUID2.0は「東洋経済オンライン」にも導入されており、広告主様に良質なビジネス関心層へのリーチの機会を提供できるようになったと自負しています。
当社もインターネット広告の健全な発展に寄与すべく、さまざまな取り組みを進めてまいります。

編集担当:尾登

 The Trade Deskのプレスリリースはこちら
「東洋経済新報社、デジタル広告取引のため「Unified ID 2.0」に対応」