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『会社四季報』を丸写しする「四季報写経」がビジネスパーソンにじわりと人気。 提唱者に聞く、そのメリットと、広告出稿企業の活用法

『会社四季報』を丸写しする「四季報写経」がビジネスパーソンにじわりと人気。 提唱者に聞く、そのメリットと、広告出稿企業の活用法『会社四季報』を丸写しする「四季報写経」がビジネスパーソンにじわりと人気。 提唱者に聞く、そのメリットと、広告出稿企業の活用法
 『会社四季報』に書かれている主要項目を表計算ソフトのスプレッドシートに書き写していく「四季報写経」が、若いビジネスパーソン、さらには学生の間で静かなブームになりつつあります。気になる銘柄について情報交換したり、「四季報写経会」など、交流イベントも開かれています。提唱者である山川隆義氏に、「四季報写経」のポイントやメリットを聞きました。

ビジネスプロデューサー合同会社
代表社員
山川 隆義 様

京都大学工学部および同大学精密工学修士。現・日本ヒューレット・パッカード合同会社、ボストン コンサルティング グループ(BCG)を経て、2000年に株式会社ドリームインキュベータ(DI)創業に参画。06年から20年まで代表取締役社長。現在はビジネスプロデューサーとして、エンターテインメント、証券、産業財、ヘルスケア、IT分野の企業における社外役員およびアドバイザーとして活動するとともに権利マネジメントビジネスを実践

 

四季報を丸写しすることで、産業構造など周辺の情報も見えてくる

——山川様は「四季報写経」を提唱されています。現在多くの人が四季報写経をするようになりブームが広がっていますが、そもそもどのようなきっかけで始められたのかを教えてください。

 私は大学院を卒業後、横河ヒューレット・パッカード(現・日本ヒューレット・パッカード合同会社)に入社し、いくつかの部署を経てシステムエンジニア(SE)になりました。
 当時は大型のメインフレームからUNIXマシンにダウンサイジングしたころでしたが、なかなか売れず、同社のSEは暇でした。そうしているうちに、上司から『会社四季報』を渡されて「この中から儲かっている会社を探せ」と言われたのです。1993年ごろだったと思います。
 最初にそう言われたときは、「四季報を眺めてビジネスに役立つのか?」と、疑問もあったのですが、その上司が非常に優秀な方だったので、とりあえず彼がそう言うならやってみようと始めました。「ロータス123」という表計算ソフトに、『会社四季報』に書かれている内容を入力していきました。
 半信半疑で始めたのですが、やってみるとこれが面白いのです。というのも、『会社四季報』は企業の特色や注目材料、業績、財務内容、株価の動きなどを一覧できますが、10年分くらいの四季報を入力すると、その企業の成長の軌跡、さらには業界全体の浮き沈みなどの流れも見えてきます。

——山川様は『会社四季報』のどの情報をとくに注目してご覧になっていますでしょうか。

 巻頭の「業種別業績展望」や「ランキング」はいつも必ず読んでいます。ここを見ることでどの業界が伸びているのかといったマクロ的な動きを把握できるとともに、その中で特定の企業の業績が業界平均より上なのか下なのかといったこともわかります。
 例えば、業界平均よりも営業利益が高い企業があったとすれば、その企業のページを見ることで、その理由やここ数年の変化なども見えてきます。
 私の周囲の人でも、「業種別業績展望」や「ランキング」は読み飛ばしていると聞くことがあるのですが、むしろ、これらを見て、好業績の企業が集中しているのはどんな産業なのか、どんな共通性があるのかといったことを把握したうえで各企業のページを眺めるといいと思います。

「四季報写経」をすることで、仮説を構築する「知の資産」を身に付けられる

——「四季報写経」をすること、あるいは『会社四季報』を定期的にウォッチすることでビジネスパーソンが得られるベネフィットはどのようなものでしょうか。

 『会社四季報』に掲載されている1社だけ書き写しても手応えはないかもしれませんが、300社ほどもやっているといろいろなデータの関連性が見えてきます。
「あの会社もこの会社も、親会社は○○社だ」といった資本関係、同業同士での再編や統合、サプライチェーンなどの業界全体の構造なども把握できます。風が吹けば桶屋が儲かる、ではないですが、周辺の部品やサービス供給企業まで影響が出ます。
 東洋経済は今では、『会社四季報 業界地図』といった便利な業界研究本を出していますが、それがなかった頃から、私はさまざまな業界の「業界地図」を頭の中に描いていました。
 私は横河ヒューレット・パッカードから、ボストン コンサルティング グループ(BCG)に転職しました。周りは、海外の大学でMBAを取得したような人ばかりで、MBAなし、海外留学なし、というのは私だけでしたが、そこでも私が実績を出せたのは、『会社四季報』を書き写していたインプットがあったからだと思います。

——著書の『瞬考~メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す 異質のキャリアから生まれた思考法~』(かんき出版)でも、「インプット量が仮説を導き出す速度と精度を決める」と述べられています。

 ビジネスパーソンにとって大切なのは、仮説を立てられることです。「みんなが気づいていなくて、気づくべきこと」が面白い仮説です。みんなが知っていることは仮説ではありません。
 革新的な生成AIが登場しています。みんなが知っていることを答えるだけなら、AIに全文検索させればいいのです。AIを使いこなすには、「何をやるか」という目的の設定、「何が課題か」を把握する仮説スキルが求められます。そのためには頭の中に、多数の事例や事象を累積させため込んで、「知の資産」をつくり、長期の時間軸を意識して思考することが大切です。そうすれば仮説は一瞬ではじき出せます。
 このような「ぬか床」をつくっていくためにも「四季報写経」は大いに効果があると考えています。

——若いビジネスパーソンが仮説を構築する能力を高めるためにも「四季報写経」は役立ちそうです。

 そのとおりです。ベテランと新人の差はどこにあるかと言えば、まさに「知の資産」があるかどうかです。これまではOJTのように、仕事を通じてやりながら覚えていくしかなかったのですが、「四季報写経」をやることで、一気にその知識を身に付け、追いつき、追い抜くことができます。MBAなし、海外留学なしという私が、BCGでほかのコンサルタント以上の実績を出せたのもそこに理由があります。
 ただ、誤解していただきたくないのは、40代、50代のベテランのビジネスパーソンであっても、まだまだ学ぶことができるということです。例えば、東証のグロース市場に上場しているスタートアップ企業などについては、あまり知られていないことが多いものです。今、どのような産業が成長しているのかを見るだけでも新たな気づきや発見があるでしょう。

『会社四季報』「会社四季報オンライン」に広告を出稿するメリット

——ビジネスパーソンや投資家など四季報の読者にとって、『会社四季報』「会社四季報オンライン」に掲載されている広告はどのような価値がありますか?

 業績が悪いと、まず広告費用が削られるものです。広告が継続的に出稿されているということは、業績が堅調なのではないかと想定できます。また、個人投資家に向けた広報(IR)にも力を入れていると考えられます。

——ご自身もドリームインキュベータの社長をなさったり、また多くの企業のコンサルティングをしていらっしゃいますが、そのご経験を踏まえ、『会社四季報』に広告を出す企業側のメリットはどういう点にあるとお考えでしょうか。

 個人投資家やビジネスパーソンに、自社の事業や業績などについて新たな発見をさせたり、認知させたりする機会になるでしょう。
 例えば、ミシンメーカーというと、国内では成熟しており苦戦しているとイメージする人が多いかもしれませんが、あるミシンメーカーさんは、すでに海外にシフトし、海外市場で大きく成長しています。また、ミシンの技術を応用した卓上ロボットを開発し、今では業界トップクラスになっています。その会社はIRに力を入れ、『会社四季報』などにも広告を出稿してこれらを訴求しています。「わが社は元気に成長している」と世の中に発信できているというわけです。

——とくにどのような企業が『会社四季報』「会社四季報オンライン」への広告出稿を検討すべきとお考えでしょうか。

 機関投資家や個人投資家など、さまざまなステークホルダー向けに、IRに力を入れているところはもちろん活用すべきでしょう。
『会社四季報』「会社四季報オンライン」の使い分けもできると思います。『会社四季報』であれば継続的に出稿し、事業内容の理解や浸透を図ることができるでしょう。「会社四季報オンライン」はむしろ、個人投資家に向けて、注目銘柄として発見してもらうことが期待できるはずです。

——『会社四季報』「会社四季報オンライン」への広告出稿を検討されている方にアドバイスをお願いします。

「四季報写経」のムーブメントなども起きているので、この機会を利用したいところです。
 出稿の目的を明確にし、継続的に、戦略的に出稿することが大切だと思います。動画コンテンツなども用意されているようなので、自社の課題や狙いに応じて利用してはいかがでしょうか。


編集後記

 『会社四季報』「会社四季報オンライン」は主に投資家の方が愛読者で、当社としても投資のヒントとなる有益な企業情報を提供するという目的で発刊しています。そんな中で山川さんは、「四季報写経」をすることで仮説構築能力を身に付けるという、「ハック」的な使い方をされているのがとても興味深く、お話を伺いました。
実際に、ビジネスパーソンとしての基礎体力をつけるために『会社四季報』「会社四季報オンライン」に触れることは有効で、そういう使い方をする読者は今後もっと増えていくと思います。
そうすると、広告出稿先としての『会社四季報』「会社四季報オンライン」は、投資家の方にアピールするだけではなく、例えば採用や新製品・サービス紹介、企業ブランディングなど、広くビジネスパーソンに向けた訴求ができる媒体と言うこともできます。
ぜひ、広告にも注目をしていただき、『会社四季報』「会社四季報オンライン」を日々のビジネスに有効活用していただけたらと思います。

編集担当 尾登雄平