マーケティング戦略セミナー「東洋経済オンラインfor BIZ」のセッション3では、アクセンチュア株式会社チーフ・マーケティング・イノベーター加治慶光氏に、様々なキーワードを例として挙げながら、これからのマーケティングのあるべき姿について語っていただきました。
我々を取り巻く2つの大きな力
加治氏は、現在の世界には2つの大きな力が存在すると言います。
それは、「ソーシャルメディアの拡大による市場の発言力の急速な増大」と「IoTの進行による市場観察プラットフォームの確立」です。Facebook、Amazon、Appleなどのプラットフォーマーに対して、消費者は自分たちの情報を全て吸い上げられてしまう不安を持ち、両者にはある種の緊張関係が生じています。
「SNSでの市場の発言力の増大」と「IoTによる市場の観察プラットフォームの確立」によって、市場の発言力は増えていく一方、IoTによってマーケターが我々を観察するという、相互観察社会が発生します。そしてそのような相互が観察している社会では、「お互いがお互いを信頼すること」が重要となります。
世界をより良い場所にすること
加治氏はこのように問いかけました。
果たして、皆さんはどのような会社を信頼することができるでしょうか?
加治氏がその答えとして挙げたのが、フィリップ・コトラー氏の著作「マーケティング3.0」です。
それによると、企業のマーケティング活動のガイドラインは、「企業のミッション、ビジョン、価値そのもの」であるということです。世界をよりよい場所にしていくためのメッセージと、そのための活動そのものが、企業のマーケティングとなっていきます。大事なことは、社員全員が企業のメッセージをきちんと理解し行動に移していくことです。もし1人でもおかしな行動をする人物がいれば、それがSNSで拡散し、企業の信頼は大きく損なわれてしまいます。本気でその企業が世界をより良くしていきたいと思っているかが重要です。
そのためのキーワードがSDGs(持続可能な開発目標)というものです。世界の193か国が国連の合意の元に、2030年までに世界の諸問題を解決しようという約束です。これには、飢餓や教育といったものの他に、イノベーションや働き方といった、私たちに関係が深いものもあります。
世界の全ての人がこれらの諸問題に少しずつ取り組み、2030年までに解決しなくては次の世代に未来を引き渡せないという強いメッセージがあります。世界中が2030年のこの目標のために動いてきます。逆に言うと、ここに大きなビジネスチャンスがあるとも思います。SDGsについて、詳しくはこちらのリンク先にてご覧ください。
ソートリーダーシップ・PESO・Fファクター
加治氏は最後に、これからのマーケティングに重要な3つのキーワードを挙げました。
最初のキーワードが「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」です。
これは組織の哲学、主張、想い、理念などを表明し、特定の分野やビジネスの世界などでリーダーシップをとっていく人または企業の活動のことを言います。ソートリーダーシップ実践のコツとして以下が上げられました。
・自社の商品やサービスを売り込むことを目的としない
・顧客や消費者の意識の文脈に寄り添いながら、思考や解決のヒントとなる情報を提供する
・文脈にあった客観的第三者から紹介されたり、引用されたりするような設計と連携が重要
続いて「PESO」です。PESOは、「Paid Media・Earned Media・Shared Media・Owned Media」の頭文字を取ったもの。以前はShared MediaはEarned Mediaの一部でしたが、アメリカのマーケティングではあえてShared Mediaを分けて考える動きがあります。PESOの気を付けるポイントとして以下が挙げられました。
・情報の伝達チャネル拡充とコンテンツの精度、信頼性を向上させる
・自社のウェブサイトやソーシャルメディアを積極的に併用する
・形態を問わず、白書、ランキング、調査結果を公開するなど
・出典明記を条件に、あえて無料で公開し、引用・共有を促進し拡散させる
最後は「Fファクター」です。先述のコトラー教授が「マーケティング3.0」の次作の「マーケティング4.0」で語った言葉で、Fとは以下の4つの頭文字を指します。
Friends:友達
Families:家族
Facebook fans:フェイスブックのファン
Twitter followers:ツイッターのフォロワー
この4つのFが購入やブランディングの対象となっていることが重要である、ということです。