ポストクッキー時代に「コンテンツメディアコンソーシアム」が目指すもの

ポストクッキー時代に「コンテンツメディアコンソーシアム」が目指すもの

折野 美佳

企業広告がデジタルへとシフトしていき、デジタル広告市場はますます拡大しています。しかしその半面、「質のいいコンテンツ作り」ができる環境は未整備のままでした。そこで、広告主やユーザーにとって本当に信頼のできる質のいいコンテンツ作りを目指して、日本国内の有力メディア28社が集結し、「コンテンツメディアコンソーシアム」を立ち上げました。この取り組みの目指すところは何なのか。前回に引き続き、プログラマティック広告担当の新津尚男が解説します。

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媒体社が主体となってデジタル広告を配信する時代へ

――2020年のコロナ禍では巣ごもり需要なのか、各オンラインメディアのPV数が激増しましたよね。軒並み高PV数を記録しているのでオンラインメディアが乱戦状態とも言えますが、デジタル広告の売り上げも右肩上がりではないでしょうか。

実際、日本のデジタル広告の売り上げは2兆2900億円にまで拡大しています。しかし、そのうち出版社や新聞社などマスコミ四媒体のインターネットサービスの広告費は803億円(電通「2020日本の広告費」)。その他の大部分を、中間ベンダーやプラットフォーマーの中抜き、そしてアドフラウドのような詐欺広告が占めているのです。この数字から見てもわかるように、純粋なデジタルコンテンツや広告の価値はいまだ高くないというのが現実です。
東洋経済オンラインのように専門記者が取材をした記事を配信するウェブメディアと、フェイクニュースやコピー記事を配信するサイトの価値が同じでいいのだろうか、という問題はこれまでずっとありました。コンテンツをまじめに作っているメディアが評価されなければ広告単価は低いままで、いずれメディア運営は厳しくなります。そうなれば良質な情報を世の中に出せなくなってしまう。この問題解決はつまり、ユーザーのためでもあるのです。

――どんなに質のよいコンテンツを作って高いPV数を獲得しても、正当に評価されていないということですね。

既存のプログラマティックでの広告費は、広告主が支払ううちの3割程度しか媒体社には入ってこないという話もあります。膨大なユーザーがいることは魅力ですが、質を問わないメディア横断コンテンツなので、本当に届けたいユーザーにリーチしていない可能性もあります。広告主にとっては、広告費を無駄にしている可能性もあるといえるのです。広告主、媒体社、双方にとって不幸ですよね。また、キュレーションメディア(ニュース記事などのウェブ上にある情報を取捨選択し、再構築して掲載するウェブメディア)は、媒体社に記事利用料を支払っていますが、それも低すぎるのが現状です。良質な記事に正当な対価をもらうことは、メディア運営のためだけでなく、広告主が出稿したくなるような媒体ブランド確立のためにも必要なことだと考えています。
こうした問題意識を持った媒体社が集まり、2020年に「コンテンツメディアコンソーシアム」を創設しました。東洋経済新報社が代表幹事となり、朝日新聞や講談社、フジテレビなどの日本国内の有力メディア28社が集結。放送や新聞、出版社の枠を超えてこれだけの企業が集まったことは快挙といえますね。

 

良質なコンテンツとユーザーを重視した仕組み

――クッキー(ユーザーを識別して、情報を記録・保持する機能。デジタルマーケティングに広く使用されていた)を世界的に制限する流れとなっています。ポストクッキー時代に対応する強みなどはありますか?

良質なコンテンツを持つ媒体社が集まっているので、それぞれに良質なユーザーがついています。「コンテンツメディアコンソーシアム」の28社のアクティブリーチ(広告への到達率)を合計すると、スマホユーザーの約半数(約47%)、PCユーザーの約3割(約28%)にもなります。非常に有力なコンテンツ、媒体社が集まったといえるでしょう。有するオリジナル・ウェブ・コンテンツは約150にもなり、媒体側が主体となった広告商品の開発が可能です。2020年の7月には、デジタル広告のPMP(プライベート・マーケット・プレイス)運用もスタートしました。これによって、適正な広告単価を定めることができるし、コンテンツにマッチした広告メニューを企画して、エンゲージメントを高めることもできます。
また、28社が共同で参画する各メディアのコンテンツを横断的にターゲティングしたり、信頼できるメディアとして、われわれのネットワークのブランドを確立したりすることも可能です。今後は、コンテンツのユーザー指向を軸としたデータ活用も考えています。

――ユーザーからも広告主からも「正確で安心なメディア」として選ばれるブランドを確立することが先決なわけですね。

そうですね。コンテンツメディアコンソーシアムへの加盟媒体は、第三者機関の検証を受けています。全社目視の配信確認を徹底し、アドフラウド(広告詐欺)が発生しないような仕組み作りをしています。アドベリフィケーション(ビューアブルとブランドセーフティの点から、測定ツールを用いて広告配信をコントロールしていく仕組み)を徹底することで、信頼性があり、リーチが確実で広告効果の高いメディアグループとしてのブランドを確立していきたいです。広告主の団体・日本アドバタイザーズ協会では、ブランド毀損にならないメディアの「ホワイトリスト」というものを作成しています。われわれ自身が「ホワイトリスト」化して、広告主から配信先として最優先される存在となりたいですね。

 

コンテンツメディアとしての収益構造の拡充

――とはいえ、広告収入だけでは先細りになるのではと心配です。今後、収益構造を広げていくためにはどのような課題がありますか?

目下の課題としては、デジタル広告ビジネスで十分な収益を上げることです。将来的に収益構造を広げるという観点で見ると、コンテンツメディアとしてのビジネスを成功させることですね。海外では「ニューヨーク・タイムズ」などサブスクで成功を収めたメディアもあります。各媒体の強みを生かして、その力を見定めながら多角的な収益構造を持って結果を出していくのが最終的な目標になるかと思います。

 

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