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第3回東洋経済CSRセミナー 女性だけでない!LGBTの視点で考える本当のダイバーシティ

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2015年1月23日




 2014年9月17日に「第3回東洋経済CSRセミナー ~女性だけでない!LGBTの視点で考える本当のダイバーシティ~」を開催した。参加者は71名だった。今回はその模様を報告する。

1.講演
2.パネルディスカッション

■講演 「ダイバーシティ推進に欠かせないLGBTの視点」

 ダイバーシティ(多様性)推進を進める企業は多い。ただ、取り組むテーマが女性活用に偏りすぎ、多様性につながっていないケースもある。今回は各社のダイバーシティ活動の基本的な考え方の参考となるよう、村木真紀氏に「ダイバーシティ推進に欠かせないLGBTの視点」というテーマでご講演いただいた。

【講演者】
村木真紀(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ代表、一般財団法人 ダイバーシティ研究所理事)
=敬称略、役職は2014年9月17日時点

組織全体での「ダイバーシティ」推進が必要

 社会の持続可能性を脅かす問題に、人口変動があります。人口変動とは、日本でいえば少子高齢化社会のことですが、この少子高齢化社会を維持していくために必要なのが、ダイバーシティです。
 誰もが生きやすく、働きやすい社会を作らないと、社会そのものが立ち行かなくなってしまいます。

 OECD諸国を対象にした調査によると、「男女の格差が少ない国では、人口が増えている」という報告があります。男女格差の小さな国では、介護や子育てを国として制度化して女性の就業率を向上させています。
 
 これにより一世帯当たりの所得を増やし、人口変動による影響を緩和しています。深刻な少子高齢化が進む日本でも、こうした取り組みが必要です。
 
 現在、企業のダイバーシティ部門は、ほとんどが女性問題中心に取り組んでいると思います。しかし、ダイバーシティの本来の意味はもう少し広いもので、外見からはわからない宗教や家族状況、セクシュアリティなどの問題にも対応が求められます。その時に重要なのが次の3つの視点です。
  1. 「あってはならない違い」をなくす
  2. 「なくてはならない違い」を守る
  3. 「違いに寛容な社会」をつくる  
 この3つの視点を持ちながら、組織全体でダイバーシティを推進する必要があります。

人口の5%はLGBT

 LGBTについて詳しく見ていきたいと思います。LGBTの人数についての公式な統計はありませんが、人口の5%程度だと考えられています。

 これは2012年に電通総研が7万人に行ったアンケート調査で、「自分がLGBTだ」と答えた人が5.2%だったという結果に基づきます。これは障害者手帳を持っている人やAB型の人、左利きの人と同じくらいの比率です。
 
 LGBTには4つのタイプがあります。順番にレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーです。
 
 レズビアンとゲイは女性の同性愛者、男性の同性愛者。バイセクシュアルというのは、性別に関係なく異性を好きになることも、同性を好きになることもある人たちです。
 
 トランスジェンダーは、生まれた時に出生届に書かれた性別と違う性で生きる人のことです。この中でホルモン治療や外科手術が必要な人が、病院で診断名をつけられると、「性同一性障害」ということになります。

世界で広がるLGBTの差別禁止の動き

 LGBTを考える際に、一般の社会問題の中にLGBT問題が含まれているという視点も大事です。子供のいじめや自殺の中にLGBTがたくさん含まれていると思います。

 小学校、中学校、高校のころに、自らがLGBTだと思っても、誰かにカミングアウトできません。このことで誰にも相談できずに悩んでしまい、最悪、自殺をしてしまう方もいます。

 私はすでに4人ほど友人・知人を自殺で亡くしています。海外では、LGBTの自殺はとても大きな問題として取り扱われています。

 日本でのLGBTへの取り組みと世界のトップレベルにはギャップがあります。日本では、LGBTに対する差別禁止法がなく、同性パートナーへの社会保障もありません。この状況は、国連の人権理事会から人権侵害ということで勧告を受けています。
 
 世界には、いまだに同性愛が罪になっている国もあります。こうした国にはアフリカや中東、イスラム圏の国々が多いです。
 
 一方で、同性結婚ができる国も増えています。最初はヨーロッパだけでしたが、カナダやアメリカ各州に広がり、ブラジルでも認められています。こうした国には、差別禁止法もあります。これらの国では同性愛者を差別することが罪なのです。

 世界は、LGBTによる差別禁止を後押しする流れにあります。強化しようとしています。欧米ではLGBTによる差別禁止をしないと、ビジネスができなくなる恐れもあります。現在、日本基準と世界基準の間に大きなギャップがありますが、企業は世界でも最先端の基準に対応していくべきだと考えています。

コンプライアンスの問題になることも

 人材募集の広告でLGBTへの取り組みをアピールする会社も増えています。こうしたアピールをするのは決してLGBTが優秀だからという訳ではありません。優秀な人の中の5%にLGBTがいるからです。

 アメリカでは企業の取り組みを、NPOが審査しています。トヨタ自動車は2012年に出したLGBTに関する広告で、アメリカのLGBT団体が選ぶ、企業広告賞を受賞しています。日本企業がアメリカで企業広告賞を受賞するのはすごいことだと思います。

 日本国内でも少しずつ取り組みが始まっています。ソフトバンクは同性同士でも携帯電話の「家族割」が可能です。免許証や保険証を持ってソフトバンクショップに行き、住所が同じだと確認できれば、家族割にしてもらえます。日本の企業から私と私のパートナーが家族と認められたのは初めてでしたので、すごく感激したことを覚えています。

 他にも京都グランヴィアホテルと春光院というお寺では、同性同士の結婚式と宿泊のパッケージを売り出しています。好評のようで、すでに何件か問い合わせがあると聞いています。
 一方、対応が問題となったケースもあります。たとえば、任天堂のゲームソフトの「トモダチコレクション」です。このゲームでは同性結婚ができない設定になっていました。日本では問題がなかったのですが、この設定のまま、アメリカでも売ろうとしました。
 
 すると、「なぜ同性結婚ができないのか?」と、消費者がキャンペーンを開始しました。任天堂の対応が差別的ではないかとメディアに掲載されてしまい、最終的には謝罪の声明を出すことになりました。
 同性結婚ができる国は年々増えていますが、それを知らずに無視してしまうと、もう「想定していなかった」ではすみません。商品やサービスでLGBTを想定していないと、すぐに「差別」と言われてしまう状況にあります。当事者にとって同性結婚とは、単なる法律以上のものであり、社会からの承認の象徴になっているからです。
 
 同性結婚ができる国で、企業がそれを無視することは、コンプライアンス上の問題にもなります。今日、コンプライアンス部門の方がいらしていない場合は会社に戻ってから担当者の方にささやいておいてください。
 
 ちなみに、生命保険はLGBTが使いにくい商品です。最近は保険金詐欺事件などもあり、二親等以内の親族しか受取人への指定が認められていません。ですから、私は自分のパートナーを受取人にした保険を掛けられません。トランスジェンダーの方は持病を持つ扱いになってしまい、加入を断られてしまうこともあるそうです。
 LGBTの人にも生命保険のニーズがあるのに、加入できる商品がないというのは本当にもったいないことだと思います。

行政や大学の取り組みも進行中

 続いて行政の例として大阪市淀川区の例を紹介します。私たち虹色ダイバーシティが「LGBT支援事業」を受託して、大きく虹が描かれたポスターを作りました。

 駅や学校、公共機関に貼ってもらっています。でも、クレームはほぼないです。それよりも賛同のメッセージの方が多いようです。

 淀川区の具体的な取り組みとしては、LGBT向けの電話相談やコミュニティースペースでのお茶会、LGBTに関する講演会の開催があります。

 大学でもLGBTの取り組みをたくさん行っています。たとえば、ICU(国際基督教大学)ではトランスジェンダーの学生向けの学生生活ガイドを出しています。学生証の名前を変えたり、性別を変えたりするほか、トイレの使い方などもまとめています。これがあることで、トランスジェンダーの人が学校を辞めないですみます。

 関西学院大学では、1週間かけてLGBTのイベントを学生と職員が一緒になって行いました。LGBTに理解があることを示す「虹色のステッカー」を作り、非常勤を含むすべての教職員に配っています。学生が友達や支援者を見つけて、自分のセクシャリティを気にせずに、話す場ができているわけです。

大手から中小まで多くの先進事例が存在する

 私が最初に入社した会社は日系の大手メーカーで、非常に家族的な会社でしたが、自らがLGBTだとカミングアウトしづらくて、なんとなく居心地が悪くなり、3年で辞めてしまいました。家庭的な雰囲気の会社だからこそ、本当のことを話せないというのは、つらいことです。

 最後に勤めた会社はソフトウエア会社でした。非常に忙しかったこともあり、体調を崩してしまいました。しかし、後から考えるとLGBTに関する冗談をよく言う上司に苦手意識を持っていて、なかなか体調のことを相談できずにいたので、その間に体調を悪化させてしまったのです。その結果、自分は3カ月休んでしまったし、周りの人にも迷惑をかけてしまいました。

 私だけではありません。うつになったLGBTの人は実際たくさんいます。企業でメンタルヘルスの担当者はそういう人がいるということを頭に入れてほしいと思います。

 では、働きやすい職場にするためにどんなことができるでしょうか。まずは、相談窓口の人、人事の人にLGBTの研修を受けていただきたいです。そして、「サポートできる」ということを示してほしいですね。

 次に社内の制度に「差別禁止規定」を盛り込んでもらいたい。最後に、管理職研修や啓発キャンペーンです。これは女性の話も一緒に進めた方がいいと思います。女性問題もLGBTも一緒に進めることで、女性施策にもプラスの面があるからです。

 日本企業は徐々に動き出しています。「東洋経済CSR調査」によると、LGBTに関して何らかの規定のある会社は増えています。

  『CSR企業総覧』2015年版 LGBTへの対応・基本方針「あり」146社一覧
  『CSR企業総覧』2014年版 LGBTへの対応・基本方針「あり」114社一覧

 ダイバーシティのポリシーに入れているところもあれば、企業として「CSRの人権のひとつとして守ります」と言っている企業もあります。「従業員の行動基準として従業員が守りなさい」と言っているところ、「取引先の基準として取引先が守りなさい」と言っているところもあります。
 私は、すべて入れていただきたいと思います。

 LGBTの取り組みを進めるためには当事者と触れ合うこと、LGBTに関する基礎的な学習機会を持つことが大切です。
 LGBTが社会的にどんな困難を抱えているかを知り、必要があればサポートするよ、という人を、英語ではアライ(ALLY)といいます。私はアライこそが、日本のLGBT施策に求められているものだと思っています。
 当事者を数えるのは難しいですが、アライであれば数値化も可能です。例えば、「講演会に何人参加したか」。そういった形で数えられます。

 そこで、秘密兵器となるのが虹色のシールです。私たちは講演の後で虹色のシールを配っていますが、これで少なくともLGBTに対する基礎知識を知っているという目印になります。LGBTの理解者なのだとこのシールでアピールしてもらったら、その人にならカミングアウトできるかもしれないと思います。
 
 日本で「身近にLGBTの人がいる」と答える人はすごく少ないです。しかし、これは当事者が身近にいないわけではなく、カミングアウトしている人が少ないだけです。
 ただし、日本の特徴は身近に対象者がいないのに意外と受け入れられていることです。国際比較データによると、「社会は同性愛者を受け入れるべきだと思いますか」という問いに対して、54%が賛成です。これは、アメリカ(60%)とあまり変わりません。

 2020年の東京オリンピックには、LGBTをカミングアウトしているアスリートもたくさん来日します。社会全体の5%はきっとLGBTです。その時に今の東京のままだとどう思われるでしょうか。

 2020年の東京オリンピックには、LGBTであるとカミングアウトしているアスリートもおそらくたくさん来日します。その時に今の東京のままだとどう思われるでしょうか。

質疑応答

Q:日本では、LGBTを許容する人は多いと紹介されました。ですが、日本人的な感覚としてどこかの誰かならいいけど、自分の子供だと嫌だと感じる人もいると思います。他人の問題と自分に近い問題で、何か違いがあると思いますか?

A:きっとそういう方は多いと思います。しかし、人口の20人に一人はLGBTとすると、20人に一人の親はカミングアウトされる可能性があります。そのときに、どのような反応をするかで、親と子供の関係が決まってしまいます。LGBTだということが原因で、親と疎遠になっている人も多くいます。場合によっては親のサポートも必要だと思います。

Q:社内で何かをしたいと考えているのですが、急にこうした話を会社に持ち込むと、場合によってはマイノリティの方を傷つけてしまうのではないかという危惧もあります。何か、具体的な進め方のアドバイスがあればお願いします。

A :実際に取り組んだ企業の反応を聞くと、否定的な声は少なく、やってくれてよかったという声が多く届きます。例えば、カフェテラスに虹色の啓発グッズを置くとか、LGBTの映画を観に行くイベントを行うとか、いろいろな人が関わりやすいことから始めるのがいいと思います。
 LGBTは5%もいるのですから、社内にもいて当たり前だと思ってください。例えばシールを貼って、積極的にふるまっていると、カミングアウトされるものです。
 ある会社では、人事が研修を受けたことを社内に伝えたら、カミングアウトする人が出てきたそうです。
 
 最初の一歩がすごく難しいですが、ぜひ研修からでもいいので始めてください。何もやらないと、海外で法令順守に違反するかもしれないし、会社の居心地が悪くて会社を辞める人も出てきてしまうかもしれません。

■パネルディスカッション
「日本企業のダイバーシティの取り組みは今後どうあるべきなのか」

 セミナーの後半は、パネルディスカッションを行い、主にLGBTの視点からダイバーシティについて議論した。

【パネリスト】
●村木 真紀(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ代表、一般財団法人 ダイバーシティ研究所理事)
●和田 征樹(株式会社Energetic Green取締役)
●國田 有華子(グローバル・サスティナブル・ビジネス・アライアンス準備室研究員)

【モデレーター】
●岸本 吉浩(東洋経済新報社『CSR企業総覧』編集長)
=敬称略、役職は2014年9月17日時点

ダイバーシティの範囲は日本企業の常識よりもっと広い

 ――企業がダイバーシティ推進するためにはどうすればいいでしょうか?

■和田:

 ダイバーシティというと、女性活用・活躍や障害者雇用などが取り上げられます。しかし、CSRコンサルタントの私としては違和感があります。日本企業の現状は、産業団体などの団体が、ガイドラインを出してやっている企業が多いと思います。
 
 実際、CSRとして行っているケースが多いと思いますが、
そもそもCSRは周りに言われてからやるべきものでしょうか。
 CSRの本来の意味は「企業の社会的責任」ですので、一企業が「大事だ」と考えたことを決めて行えばいいのです。
 現状の取り組みの多くは法令順守・コンプライアンスに近いように感じます。企業は本当に何をするか考えなくてはいけないのではないでしょうか。

■國田:
 女性雇用や障害者雇用など個別のテーマについては取り組みが進んでいると思います。LGBTについて取り上げられることも増えました。ただ、もっとダイバーシティの本質について考えられているとはいえないのではないでしょうか。

■村木:
 
CSR部門の方がターゲットとしている目標が適切ではないと思います。企業は政府に要求されることについていけばよいと思っているようです。
 本来のダイバーシティはもっと範囲が広いものです。この問題は海外の投資家やアクティビストに追及される可能性が高いです。自社の弱いところや対応すべきところなどを洗い出した方がいいと思います。

LGBTの問題は他のマイノリティの課題でもある

 ―― 表に出てこないダイバーシティが重要だと考えますが、LGBTの対応は、企業のダイバーシティ推進につながるのでしょうか?
 
■和田:
 日本では急速に生産人口の減少が起きています。その中で、企業は生産性を上げていく方法を考えなければなりません。生産人口が減れば、当然、人手は足りなくなり、モノを作るキャパシティは落ちます。
 ここで必要なのがLGBTを含めた多様な人材の活用や支援です。他にも外国の方の活用なども含まれると思います。こういう方を活躍するためには、人事の方も真剣に考えていかなければいけないと思います。

■國田:
 私は、当事者の立場からどのようにLGBTやダイバーシティを訴えかけていくべきなのかという視点でお話しします。1つはリスク面です。実際にLGBTはリスクになっていて、国際基準で考えると重要だと訴えることだと思います。
 次にチャンス面です。人口の5%もいるLGBTは活用した方がいいに決まっています。顧客の中にも一定数いると伝えることも大切です。
 最後はモラル面から訴えていくことも必要だと思います。

■村木:
 LGBTの話をすると他のマイノリティの方も、共感してくれます。例えば、在日の方で日本名を使って生活している方やHIVなどの外見からわかりにくい病気を抱えている方、宗教の問題など、マイノリティの問題は似た点がたくさんあります。実は対応の方法も似ています。
 企業によっては外国人社員とLGBTは数%ずつくらいと比率的に同じような場合も多いです。外国人とあわせて対応していくとよいのではないでしょうか。

ダブルスタンダードは通用しない時代に

 ―― 普段、職場でダイバーシティについて意識することはありますか?

■國田:
 あまりないのですが、私の会社は外国人実習生が職場にいるので土壌はあると思います。そういう意味ではダイバーシティは比較的進んでいると思います。ただ、みんなで集まって議論するような機会はあまりありません。

 日本企業は議論する場がないのが現状です。どうすれば、この問題を考えていくようになるかは今後の課題だと思います。

■和田:
 私は以前、アパレル業界にいました。デザイナーにはLGBTの方もいましたし、上司は女性でした。ただ、こうした環境は外資だからという理由だけではないと思います。仕事をどう評価するかによって、結果的にこのような環境になるのだと思います。

 例えば、仕事は国籍に関わるのか。趣味によって評価は変わるのか。外資系企業は能力主義と捉えられることがありますが、そのようになった要因は、ダイバーシティが大きなきっかけだったのかもしれません。
 実際に人事教育の場ではLGBTや宗教についての教育も行われます。海外ではカミングアウトしている人も多いですが、こういう環境の積み重ねが影響していると思います。

―― 日本企業がこうなればよいと思うことはありますか?

■國田:

 日本人はLGBTを受け入れる気質はあると思いますが、それが規範までになっていないです。
 また、企業がグローバルで言っていることと国内で違うことも多いです。こうしたギャップはあると思います。同じ企業内にダブルスタンダードが存在するので、それはやめていく必要があると思います。

■村木:
 先ほどの講演でも「世界基準に対応しなければならない」とお話ししましたが、今後はダブルスタンダードが通じない時代が来るはずです。
 日本企業は「日本の同業他社などがどうなのか」を判断材料にして行動を決めることが多いです。倫理的にどうかより、他社と横並びにしていればいい。そういう点では、他社が始めるということは一つのプレッシャーになると思います。

 勉強会等に出ている人に聞くと、LGBTに関係するいろいろな話が出てきます。ざっくばらんに話せる環境があれば、きっと新しい話を見つけられます。私は、LGBTの方がいる組織はおもしろいと思います。チームの中に一人くらいカミングアウトしているLGBTがいる組織の方が、競争力も高まるのではないでしょうか。
 こういう会社が少しずつでも増えていけば、日本全体も変わっていくと思います。

■國田:
 LGBTにおもしろさを求められると難しいですが、多様性を許容する雰囲気は必要だと思います。

―― これから、日本の企業の多様性はどのように変化していくと思われますか。それに向けて、我々メディアも含めてどう取り組むべきでしょうか。

■國田:
  メディアが調査側として「企業がどのようなことをして行けばいいか」を提案していただけると助かります。

■和田:
  日本の職場は今後、2020年に向けていろいろなダイバーシティが推進されていくでしょう。LGBT、女性の活躍推進が進んでいます。しかし、政府にはあまり期待しない方がいいでしょう。企業はこれから2020年までに何をしていくかをすぐに検討した方がいいと思います。2020年になると、NPOやNGOもたくさん日本に入ってくるはずです。その時になってからでは遅いです。

 メディアの役割は、活躍している人をどんどん取り上げていくことだと思います。たくさんの事例を紹介していくことで、だんだん社会に浸透していくのではないでしょうか。活躍している人や企業の活動を後押ししていことが理想ですね。

■國田:
  今後、労働力不足は深刻になることが予想されます。しかし、急に職場環境が変化する事はありません。現時点で「ダイバーシティ」を声高に求めても難しいでしょう。
 ただ、2020年の東京オリンピックを契機に、多様性に敏感な職場意識が醸成できると思っています。徐々にですが、意識は変わりつつあるのではないでしょうか。
 日本人は数字やランキングが好きですので、メディアがこうした指標を示していけば、企業の取り組みも加速すると思います。

■村木:
  企業の中は知らず知らずのうちに多様化しています。今はそれが表面上は見えにくく、何のケアもできていないのが現状です。人口減少で人が足りなくなる。そういうときに、どういう企業が採用の時に魅力的に映るのか。LGBTの当事者は、企業が熱心にLGBTに取り組むと喜びます。待遇とはまた別に、LGBTへの取り組みが「この会社で働きたい」というモチベーションになるはずです。
 
 そのために必要なのはやはり「楽しい職場」なのではないでしょうか。
 メディアに求めたいことは、継続的にどう数字が変わるのか見てみたいので、LGBTに関する世論調査のデータを継続的に取ることと、さらにもっと突っ込んだ話が聞きたいです。アンケートだけではなく、もっとインタビューも取り上げて欲しいです。

今回のセミナーを終えて

 ダイバーシティというと、女性活用を中心に語られることが多い。これまでの男性・既婚・専業主婦という属性が多かった現状からは女性活用に企業が積極的なのも当然だ。だが、現状の組織は多くの人たちで成り立っている。さまざまな人材を活用するためにはこれまでとは別の視点からもダイバーシティを考えていくことが必要だとあらためて感じた。

※次回の第4回セミナーは1月29日に開催します。
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CSR seminar 4

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