【イベントレポート】東洋経済Brand Lab Live第5回「成功する『ブランド×メディア』マーケティングとは デジタル時代の価値共創のあり方」

【イベントレポート】東洋経済Brand Lab Live第5回「成功する『ブランド×メディア』マーケティングとは デジタル時代の価値共創のあり方」

片岡美佐子

2020年ラストを飾るブランドスタジオ ラボ ライブではダイキン工業(以下ダイキン)で33年にわたりブランド戦略に取り組んできた片山義丈氏をゲストに迎える。ダイキンのブランディング実践過程の最上位に置くのは東洋経済とタイアップ連載「空気で答えを出す会社」。その狙いとは何か。戦略と実行プロセス、そしてブランディングとは何か、全貌をひもといた。

主催:東洋経済 ブランド スタジオ

2019年に、東洋経済新報社ビジネスプロモーション局の広告・セミナー・カスタム出版の三つの部隊が合体した広告主向けのコンテンツ制作チームです。ミッションとして「きまじめな創造力でビジネスの課題を解決する」、ビジョンとして「顧客とユーザーに寄り添い、最良の手段で、価値ある情報を届ける「き」まじめな集団 を掲げています。真面目に誠実にクライアントと読者に向き合っていこう、という気持ちで日々、励んでおります。

ブランドは、生活者の頭の中でできる「妄想」だ

椿:私たちは、昔に比べてずいぶん情報量の多い世の中で生きていますよね。片山さんはさまざまなメディアに触れあう中で、メディア自体をどのように捉えていますか。

片山:人間ってそんなに強い生物じゃないですから、情報が多すぎると警戒してバリアをつくります。みんな、自分に関係ない情報には見向きもしなくなっていますよね。

椿:そうですね。ではこの状況で、どうやってブランドによる情報発信をしていくのでしょうか。

片山:「トリプルメディア」で情報を届けることで、ブランドづくりをしています。まず、「オウンドメディア」。これは企業が自分たちの持つwebサイトですから、好きな情報を好きな形で出せる。ここで聞きたいのですが、例えば今週、どこかの企業のサイトを見に行きました?

椿:いえ……仕事以外では、ないですね。

片山:そうですよね。オウンドメディアには、せっかくいいコンテンツを載せていても、そもそも見に来てもらえないかもしれないという弱点があります。そして2つ目が「アーンドメディア」。報道やSNSなど、第三者が発信する情報ですね。これは、企業が望んだとおりに発信してもらえるとは限らない。むしろ炎上することさえあります。最後に「ペイドメディア」。いわゆる広告で、多くの人に伝えたいことを届けるための手段です。これにはお金がかかるうえ、信頼性がないとみなされスルーされがち、という難しさがあります。この3つのメディアを組み合わせることで弱点をカバーし、情報を発信しています。

尾登それぞれのメディアの、いいとこどりが狙いですね。片山さんはそもそも、ブランドづくりをどのように捉えていますか。

片山:私は「ブランド」を、生活者の頭の中でできる「妄想」と捉えています。生活者が得た情報から頭の中で作るイメージだからです。例えば、ダイキンは世界中の国と地域で展開している企業ですが、生活者には私たちが伝えたいイメージを持ってもらえているかわからない。そこを乗り越えるべく、「認知・好感度・『エアコン』からダイキンを想起してもらえるか」をポイントに施策を考えています。

ネガ記事が出るメディアだからこそ、信頼できる

尾登:生活者の「妄想」をコントロールするにはどうすればいいでしょうか。先ほどもあった通り、生活者は自分に関係ないとみなした情報には、耳をふさいでしまいますよね。

片山:ですから、生活者にみずから情報を探してもらう必要があります。そもそも人が集まるところに情報を置こう、という発想から、東洋経済オンラインでタイアップ連載をやっているというわけです。

尾登一方でメディアには、エアコンやダイキンに対するネガティブな記事が出る可能性もあります。もちろん、東洋経済オンラインもそうです。

片山:でも、正直に言えば、そうじゃないメディアは信頼できませんよね(笑)。あくまでも事実が報道されているべきだと思いますし、実際に確かな情報を求めてたくさんの読者が集まっているのが東洋経済ですから。取り組んでいるタイアップ連載は、東洋経済オンラインというアーンドメディアにダイキンが出している「出店」のようなイメージです。


 

東洋経済オンライン×ダイキン「空気で答えを出す会社」

椿:ここからは、先ほどからお話に出ているタイアップの長期連載「空気で答えを出す会社」について、具体的にお伺いしていきます。コンテンツの内容でいうと、商品のよさだけを伝える記事ではなく、暑さ・寒さやダイキンの人材育成、グローバル戦略、環境問題への対応など、さまざまな切り口から企画を立てています。

片山:ネタは尽きないですよね。記事をつくるときは、東洋経済の制作担当者が取材をして、テーマに沿って根掘り葉掘りしてもらっています。

尾登:この取り組みのスタート時から、片山さん含むダイキン、コミュニケーションパートナー、東洋経済ダイキンチームの3社でタッグを組んで、月に1度編集会議を行っているのもポイントですよね。1つひとつの企画づくりから取材設定、原稿確認、記事公開後の振り返りまで一緒に進めています。この点については、のちほどまたじっくりお話しましょう。

大事なのは「ダイキンの欲を捨てる」こと

片山:大事なのは「ダイキンの欲を捨てる」ことなんです。タイアップだからといって、記事内でダイキンを褒めてほしいと考えては全然だめ。ときには東洋経済側に指摘してもらったり、3社で議論したりして、生活者にとって意味があるコンテンツをつくりたいと思っています。これほど力を入れているのも、ダイキンというブランドづくりの最上位にこの連載を置き、そこからTVCMやオウンドメディアの施策を考えていくからです。

椿:この連載、すでに3年弱続いており、40本ほどの記事が掲載されています。この規模感には、ダイキンさんとしてどんな狙いがあるでしょうか?

片山:さまざまな切り口の情報を載せていこうとすると、短期の施策ではどうしても厳しい。それに3社の関係性をつくって、企画に対してお互いに忌憚ない意見を言いあえるように、3年間の取り組みとしました。

椿:先ほど話に出た編集会議では実際に、1つひとつの記事について、構成や書きぶり、記事の登場人物などを議論していますね。3社それぞれの分野のプロの視点で、バランスをとっていることがポイントですね。記事のネタも、季節に合わせた旬のものから固い企業ネタまでありますので、その配分まで丁寧に議論していますよね。

片山:あれは楽しいですね(笑)。議論の過程で、情報をどう加工して発信しすればいいのかヒントが見つかります。毎回時間が押してしまうくらい盛り上がりますし、とても重要な会議です。ダイキンが伝えたいことと、読者が読みたいと思う内容が離れないように、バランスをみながら試行錯誤しています。
 

連載だからできる「うなぎのタレ」づくり



椿:
さらに記事公開後には、PVやクリック率はもちろんのこと、読了率やSNSについたコメントまで、定量的・定性的に振り返っています。


片山:こうした振り返りが本当に手厚く、すごいところだと感じています。

尾登:レポートは力を入れています。形ができあがるまで、一朝一夕ではなかったですね。

片山:だいたい、メディアさんが出してくれるレポートはPVやインプレッション数などの数字だけだったりしますよね。「好きにつまんでください」というような感じで。熱や想いがないように感じて、私はあまり好きじゃないです(笑)。

尾登:われわれも当初はそうでしたが、今ではアンケートやSNSでの反響から、どんな人がこの記事を読んだか、そして何をどう感じとってくれたかまで分析しています。毎回結果から仮説を立て、次回の施策につなげるというかたち。さらにレポートを40本分すべてアーカイブして、読まれやすい企画の「勝ちパターン」的なテクニックやノウハウを、どんどん蓄積しています。

片山;そうですね、「うなぎのタレ」って呼んでいますけど(笑)。1社だけでは広がりにくいノウハウも、3社での議論にあげることで新しい気づきを得られることも多いです。コンテンツのクオリティにも直結していると思いますね。

尾登:記事をミクロの視点で見ていくことで、まさに「うなぎのタレ」のように深みを増しています。さらにマクロの視点として、半期ごとのレポートも用意しています。ここからは、読者の興味関心の変化、起伏が見えてきます。例えばエアコンの使用は暑さ(気温・湿度)と相関があります。「暑さ」をテーマにした記事のPVとその日の最高気温から、相関を分析することもあります。

「なんでPVが跳ねた?」リアルタイムで分析

片山:こちらは伝えたいことを伝えたつもりでも、実は読者にはネガティブに読まれていた……なんてことが、実は往々にしてあるんです。それらはPVのような表面的なデータだけではわからないので、こうしたレポートにしてもらっています。

尾登:さらに、最近は社会情勢の変化が激しいので、適切なタイミングで施策を打つ必要があります。東洋経済オンラインとダイキンのタイアップでは、「Datorama」というダッシュボードツールを活用しています。これはリアルタイムでデータを共有し、グラフ表示できるようになっています。例えばある日突然PVが跳ねたら、何かが起きていることがわかります。そこからすぐに要因を探ったり、分析したりすることができる。逆に何でもできてしまうツールなので、このダッシュボードで何をしたいか? を明確にしながら使うことが大事だと思っています。

片山:こういう工夫ができるからこそ、変化の早い時代にいち早く手を打てているのだと思います。何かの要因でPVが跳ねても、その1ヶ月後にレポートをもらったとしたら、その理由や背景はわからないでしょう。東洋経済は、見るべき指標も絞り込んでから提示してくれるのでわかりやすいです。情報が多くても、やり方によっては的確な判断ができません。Datoramaでは、日々のデータの動きに注目しています。それから、記事が自然検索で上位に表示されるかもチェックしています。

尾登:SEOにはこだわりを持って取り組んでいます。東洋経済というドメインパワーに加え、検索キーワードの傾向に合わせて、過去記事も定期的にチューニングしています。

片山:尾登さんのメンテナンスで、本当に検索結果の上位にきていますので、びっくりです。最初はここまで期待してはいなかったんですけど(笑)。


椿:この連載の実施前後で、感じられた変化はありますか。

片山:3年もの長期連載ですから、記事の内容がダイキンの伝えたいことかつ生活者が読みたい内容へと洗練されていく実感があります。社外の方から、東洋経済のタイアップを見ましたと言ってもらったり。社内でも、社員が「空気で答えを出す会社」へに向けた意識が高くなっていると感じることがよくあります。

コロナ禍の中、正しい「換気」情報を届けるという使命

椿:2020年はコロナ禍で、世の中の「空気に対する意識」が大きく変わりました。連載の中でも、「換気」をテーマに据えた記事を複数出しています。その中でも2020年4月と12月では読者への響き方が異なるように感じます。

片山:2020年3月には、空調メーカーとして、換気にまつわる正しい情報を世の中に届けることが使命だと思いました。東洋経済でタイアップを出すのと同時に、自社サイトでも情報発信し、素早く客観的な視点で正しい情報を届けることを目指しました。タイミングとしては比較的早かったと思います。ただし、コロナと直結するテーマのタイアップは、一歩間違うとネガティブなステマと捉えられてしまうリスクがありますね。そこの配慮はかなり細かくやりました。

椿:ネガティブイメージにならないよう配慮しつつ、3社の意見を出し合いながら、記事の切り口を探しましたね。

片山:どんな切り口にしろ、読者が求める情報を探した結果、ダイキンのタイアップに突き当たったという流れが理想。だから、読者をだまして読ませるようなことは絶対にしません。読後感が「いいこと教えてもらった」とか「え、そうだったの!?」となるように心がけています。

 

コンテンツは、読者が興味を持てなければ意味がない

尾登;2020年でいえば、コロナがなければこんな情報発信をしたかったとか、コンテンツ制作の具体的な計画もあったかと思います。どのように切り替えましたか。

片山:コンテンツは、読者が興味を持つ内容じゃないと意味がありませんから、つねに切り替え続けることが大事だと思います。実際に換気コンテンツも、初期は「いい換気方法」など具体的な情報の出し方にしましたが、途中から読者に「コロナ疲れ」のような雰囲気が出てきましたので、もう少しゆるく換気と結びつける内容に切り替えました。

椿:読者の求めるものに合わせて、旬な切り口で情報を届けることが第一です。いつも読者を軸に、柔軟に考えることが非常に重要だと思います。
 

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