週刊東洋経済、東洋経済オンラインの記事広告は日頃、どんな人がどのような思いでつくっているのか。今回は、ビジネスプロモーション局メディア制作部の部長である萩生田啓介、記事広告ディレクターの細川めぐみ、新井泰嗣に、ざっくばらんに記事づくりの要諦や仕事への情熱について語り合ってもらった。
クライアントの要望に 丁寧に応えていく
――まず簡単な自己紹介からお願いします。
萩生田 記事広告の制作の現場に携わって28年目を迎えています。メディア制作部では基本的に各部員の業種担当はなく、それぞれの部員がさまざまな業種の商品やサービスのPRを担当し、日々クライアントの要望に丁寧に応えるよう努力しています。
細川 私は入社後、広告の進行管理を皮切りに広告営業を3年、その後、現在のメディア制作部に配属され、13年ほどになります。入社して以降、紙からウェブへと時代がシフトしていく中で、これまでクライアントといえば、金融やメーカー、IT系などが中心でしたが、現在はファッション系や一般消費者向けの商品へも広がり、業種も多岐にわたっています。クライアントが東洋経済に求めるものも多様化しており、そのダイナミズムを日々実感しているところです。
新井 私は他社で一般週刊誌の編集部などに在籍したあと、転職し、現在の部署に配属されました。週刊誌時代は、さまざまな現場に立ち会いながら、つねに読者目線に立つことをたたき込まれてきました。「三流週刊誌」と自虐的に自分たちで言うこともある週刊誌ですが、記事づくりにおける仕事の質は一流で、今の記事広告の制作においても、そのノウハウが非常に生きています。

伝えることと、 伝わることは違う
――皆さんが日々の仕事で心掛けていることは何でしょうか。
新井 常々、新入社員のレクチャーでも言っていることですが、「伝えることと、伝わることは違う」ということです。そこには大きな隔たりがあります。クライアントが伝えたいものの中から、いかに読者に伝わるものを抜き出すのか。または、伝えたいものに、どのようなフックや角度を付けるのか。そうした工夫を施すことで、読まれる記事にしていくのです。要はネタをいかに面白く見せるか。私はとくにタイトルに気をつけています。必要以上に大げさ過ぎず、記事を読んだ読者をがっかりもさせない。そのギリギリのところを攻めていく。記事においても時事的なキーワードや面白いデータやファクトを加え、商品やサービスの魅力につなげていく。そうしたことを日々心掛けています。
萩生田 いかに読まれる記事にするか。私はそこに一貫して腐心してきました。クライアントが伝えたいことをもとに、どのように読ませるストーリーに記事をつくり上げていくか。そのためには新たな視点、もしくは切り口が必要です。切り口をコンセプトと言ってもいいのですが、そのコンセプトに商品やサービスの魅力を乗せることによって説得力の高いストーリーに仕上げていくのです。
では、切り口はどのように生まれるのか。それは商品やサービスを正面から見るだけでなく、裏から見たり、すごく遠くから見たり。そうやって試行錯誤を繰り返しながら、切り口を見つけていくのです。そこでいちばん大事なのは、いかに読者に興味を持ってもらうか。共感してもらうか。そうした切り口を探し出すことだと考えています。
私たちにはクライアントと読者 2人のお客様がいる
――紙からウェブになって、切り口の違いはありますか。
萩生田 ええ。東洋経済オンラインでは、読者も多様化しているので、切り口の幅をさらに広げていくことが必要になっています。これまでの成功体験に縛られることなく、新たなチャレンジを続けていかなければなりません。
細川 この仕事には、クライアントと読者、2人のお客様がいて、その橋渡しをするのが私たちの役目だと教えられてきました。紙とウェブの違いはありますが、やっていることの本質は同じだと考えています。
私が仕事で気をつけていることは、日々のヒアリングの中で、クライアントのやりたいこと、ゴールにしていることは何かということを明確化してさしあげることです。クライアントのさまざまな声を拾い上げながら、ブランディングをサポートしていくことで、クライアントに新たな視点や切り口を提供できればと思っています。
新井 先ほど言った「伝えることと、伝わることは違う」ということで言えば、逆にクライアントが非常に良いものを持っているのに、それに気づいていないというケースがあります。クライアントが潜在的に有しているプラスの要素を見つけて、それを読者の興味・関心につなげていく。読者に伝わるものは何か。そこをクライアントにアドバイスしていくことも重要です。
細川 紙からウェブの時代に移っていく中で、記事広告も非常に読まれるようになりました。記事づくりでは、これまでも読者がストレスを感じないよう、途中で読むのをやめないよう工夫してきましたが、ウェブでは今まで以上にファクトやデータを駆使しながら、念入りに記事広告を制作しています。その結果、成功事例も増えてきているので、そのノウハウをさらに洗練させていきたいと考えています。
いかに読んでもらうか いかに共感してもらえるか
――東洋経済らしいコンテンツづくりとは何でしょうか。
新井 一言でいえば、「読ませる」ということです。東洋経済オンラインの編集記事はストレートニュースよりも、そこに新たな視点やデータを加えた解説的な記事が多い。われわれも、それに合わせた記事広告づくりを心掛けています。記事広告に有識者が登場する場合でも、単に有名だから起用するのではなく、有識者だからこそ持っている知見の面白さにフォーカスしたい。広告ではあっても、読者にひとつプラスになるような知見を盛り込みたいのです。その面白さがタイトルや記事の熱量となり、クライアントの商品やサービスの魅力につながっていく。そうしたコンテンツづくりを目指しています。
萩生田 いかに読んでもらうか。いかに共感してもらうか。あくまでデータなどファクトベースに基づいて、きまじめに商品やサービスの魅力の要素を積み上げていく。そうした姿勢は今後も変わりませんが、ウェブの時代になって、新たな東洋経済らしさというものを、これからつくり上げていくことになるかもしれません。
細川 確かに東洋経済オンラインでは、読者層の幅が広くなったと考えています。記事広告についても、金融やメーカー、ITの専門的な記事だけでなく、ライフスタイルに関する一般向けの記事も増えてきました。どの読者層にフォーカスするかで、記事づくりも変わっていく。東洋経済らしさの幅が広がっているのです。