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第6回東洋経済CSRセミナー 今知っておくべき!必要とされるCSR・ESG情報の開示

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2016年1月20日




 2015年9月30日に「第6回東洋経済CSRセミナー 今知っておくべき!必要とされるCSR・ESG情報の開示」を開催した。参加者は116名だった。今回はその模様を報告する。

1. 講演
2. パネルディスカッション

■講演
企業に求められる CSR・ESG情報開示の最前線

 2015年6月から適用開始されたコーポレートガバナンス・コード、統合報告など上場企業を中心に非財務情報の開示を要請される機会が増えています。ただ、これらは主な利用対象が投資家で、これまでの幅広い層を対象としてきたCSR報告書等とは異なる情報開示が必要になってきています。

 こうした変化の中で企業はこれまでのCSR・ESGの開示を見直し、さらに進化させていかなければならないのは明らかです。ただ、多くの利用者がいるCSR・ESG情報をどう変えていけばよいかを明確にすることはベテランのCSR担当者でも悩むところではないでしょうか。

 そこで今回のセミナーでは、前半の講演で、 株式会社イースクエア代表取締役社長本木啓生氏に「企業に求められるCSR・ESG情報開示の最前線」というテーマでご講演いただきました。

【講演者】
本木 啓生(株式会社イースクエア代表取締役社長)
=敬称略、役職は2015年9月30日時点

ESGの情報開示を求める世界のステークホルダー

 2003年は「CSR元年」と呼ばれていますが、それから10年以上が経過しCSRは大きく変わってきました。特に最近は社会や環境などの制約が増し、企業は正しい方向感を持ち変化に対応していくことがより重要となっています。

 CSR活動にはコンプライアンスなど絶対やらなければいけないことがあります。その上で、事業活動や社会貢献的な活動でステークホルダーから評価してもらう必要もあります。
 この境を私たちは「CSRゼロ線」と呼んでいます。この線は自分たちではなくステークホルダーが決めます。社会が複雑になるにつれ線の位置は少しずつ上がっています。

 さらに企業は「誰に対してCSRコミュニケーションを取っていくか」の決定も重要です。「ステークホルダー」と一言でいっても消費者、地域社会、学生などさまざまな相手がいます。それを見極め、どういったツールを使いコミュニケーションしていくかが大切です。
 たとえば、東京海上グループやファーストリテイリングはCSR小冊子、損保ジャパン日本興亜や楽天はフェイスブック、ブラザー工業や三井住友信託銀行はブログ、味の素やパナソニックは動画を使い、それぞれ特徴ある情報発信をしています。このように各社の目的に応じて最良の効果を出すツールを考えていく必要があるのです。
 
 企業に情報開示を求める主な対象は証券取引所、規制当局、グローバルNGO、投資家の4つです。この中で特に証券取引所が大きく変わってきています。
 たとえば、すでに持続可能な証券取引所(SSE)イニシアチブが2009年に開始しています。ニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所など24の取引所が参加し、上場企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する透明性やパフォーマンスの向上に取り組んでいます。
 
 取引所の動きは投資家が変わってきたことが背景にあります。世界の主要取引所が加盟する国際取引所連合(WFE)に「サステナビリティ・ワーキング・グループ」があります。ここが世界の60の取引所に対して行った調査によると、「投資家からESG関連の問い合わせを受けることが増えた」と39%が回答しています。
 投資家がESGに注目するなか、マレーシア証券取引所では企業のサステナビリティの実践・情報開示を強化する提案を公表するなど証券取引所自身もルール化を進めようとしています。

 米国では米国証券取引委員会(SEC)が「気候変動に関する情報開示ガイダンス」を発表しています。サステナビリティ会計基準審議会(SASB)でも非財務情報の開示基準作りを進めています。
 CSRの先進地域である欧州では大企業を中心に非財務情報を義務化する指令が出されています。年次で環境、社会、従業員、人権尊重といった非財務情報の開示が義務づけられました。
 ここでは方針や成果、リスク、KPIなども開示しなければなりません。できない場合はなぜできないか理由を説明する必要があります。日本でも有名になった「コンプライ オア エクスプレイン」というわけです。対象は6000社で、2年間の移行期間後の2017年から、EU指令の下に各国で法制度化されていきます。

 日本では「アベノミクス3本の矢」をベースに情報開示が広がっています。また伊藤レポートを中心に「スチュワードシップ・コード」や「コーポレートガバナンス・コード」なども連動し、成長戦略として進められています。

 他にグローバルNGOからの働きかけも強まっています。イギリスのNGOであるオックスファムは「温暖化に加担している」と大手食品・飲料メーカーを批判しています。日本でも有名な環境NGOのグリーンピースも日本企業を含む「電機業界16社の環境対策比較レポート」を発表し企業に圧力をかけています。
 このようにさまざまな機関が企業を監視するようになっているのです。

GPIFの署名で年金全体の71%がESG投資に

 続いて情報開示について説明していきます。CSR情報開示のガイドラインとして有名な「GRIガイドライン第4版(G4)」でもっとも重要な概念は「マテリアリティ(重要性)」です。企業はこの重要課題をどう認識するかが大切です。

 長期投資家にわかりやすいフレームワークとして国際統合報告評議会(IIRC)が作成した「統合レポート」もあります。従来の財務資本だけでなく、人的資本や社会・関係資本や自然資本など6つの資本を使い、ビジネスモデルの中でどのように資本を価値に変えていくかを示すことができます。

 GRI、IIRC、SASBは、それぞれ枠組み、想定対象、マテリアリティの考え方が多少異なります。特にSASBはマテリアリティを産業別に決定しています。企業は情報開示の目的に照らして、各基準を使いこなしていくことが求められています。

 こうした情報を活用するサステナブル投資は世界的には大きく伸びています。たとえば、大きな金額を運用するメインストリームの投資家のESG側面を組み込むESG投資(インテグレーション)は2012年の5.9兆ドルから2014年には12.9兆ドルに増えています。他のエンゲージメント・議決権投資等を含むと21.4兆ドルとなります。

 サステナブル投資と業績に関してはこれまでにアカデミックの世界などでいくつも分析がされています。その中で「CSRに優れた会社は資本調達コストが低くなり、中期から長期では企業業績との相関がある」というものが増えています。また、私が調べたところ、欧米のサステナビリティに優れた企業10社の株価はリーマンショックでも上がり、その後も上がっています。

 ESG投資はもともと国連責任投資原則(国連PRI)から始まっています。国連グローバル・コンパクトが提唱し、環境・社会・ガバナンス(ESG)の側面を投資判断の際に考慮することを呼びかけています。
 現在約1400のアセットオーナーや運用機関が署名し、現在は世界の年金の49%を占めています。それが先日(2015年9月29日)の国連総会で安部首相が発言したように、さらに日本のGPIFが加わることで世界全体の71%となります。今後、日本の企業年金連合会なども入ると予想されますので近いうちに76%まで上昇するでしょう。

 このPRIには6つの原則がありますが、受託先の運用機関に対してESG課題への対応や方針について署名や説明が求められます。もし対応しない場合はその理由を述べなければなりません。
 こうした背景から一般企業は今後、金融機関などからCSRやサステナビリティに関する問い合わせが増えるでしょう。ぜひ、こうした外圧を社内で活用し、社内を変えるきっかけにしていただければと思います。

ESGを配慮した投資が常識の時代に

 運用機関には投資家の利益を優先する受託者責任がありますが、「ESGの考慮は受託者責任に反するのではないか」という議論がありました。しかし、最近の考え方や多くのレポートでは「配慮することは
当たり前」
となっています。このように以前とは大きく変わっています。この変化のきっかけはPRIであることは間違いありません。
 
 実際グローバルの年金基金では議決権行使にESG情報が使われています。年金基金などのアセットオーナーはインベストメントマネジャー(運用機関)に委託し議決権が行使されます。このアセットオーナーにあたるのがGPIFなどです。さらに企業を評価するのがESG調査・評価機関です。

 GPIFはアセットオーナーとしては世界ダントツ1位ですが、2位は運用資産が100兆円を超えるノルウェー政府年金基金です。ここは早い時期からESG投資を行っています。たとえば「子どもの権利」や「気候変動リスクマネジメント」などをフォーカス分野として取り上げています。
 ノルウェー財務省は組み入れ銘柄の排除のためのガイドラインも作っており、「企業に問題がある場合は投資対象から外す」と2014年末に宣言しています。実際に環境面に問題があった韓国とマレーシアの会社を除外しています。

 運用機関の代表例として米国のブラックロックやフランスのアムンディ・グループがあります。アムンディは全資産の95%でESGを考慮し投資しています。同社は環境・社会・ガバナンス15項目の一般基準と22項目のセクター基準の合計37基準に基づいて投資を行っています。
 
 日本でも、ニッセイアセットマネジメントが方針を打ち出して取り組みを進めています。日本株のアクティブ運用ではほとんどすべてESGの要素を取り入れていると発表しています。
 
 続いて、ESG調査・評価機関にはサステナリティクスやアイリス、ウーコムなどがあります。アムンディのような運用機関はこうした評価機関の情報を使い投資判断をしていきます。
 ESGでの企業評価はアンケート方式から開示データによる勝手評価が主流になってきています。証券監督者国際機構(IOSCO)の基準など評価の透明性を重視する流れが鮮明で公開情報で判断するようになっているのです。

 このように企業がCSRで取り組む重要なテーマはいろいろな形で公表されています。これらに基づき情報開示と取り組みを進めていくことで、長期的な企業価値が向上し、会社だけでなく社会の持続的発展にもつながります。
  企業としては開示目的とターゲットの明確化は不可欠です。さらに投資家がESG情報を積極的に使うようになればなるほど企業側としてはCSRとIR部門の連携も重要になってきます。さらに経営企画部や事業部との密接な関係も必要でしょう。全社的にマテリアリティ課題の把握と対応もしなければなりません。

 社会の動きが激しい中、経営層のコミットメントがより重要になってきます。変化を把握して幹部に適切に伝えるため、CSR担当者が担う役割は今後より大きくなるでしょう。

質疑応答

Q:これまでマルチステークホルダーをターゲットに報告書を作ってきましたが、これから投資家対象にする場合はどうすればよいのでしょうか?

A:報告書は必ずしも一般の人は読んでいません。統合思考をベースに企業価値をわかりやすく表現することで投資家にターゲットを絞る一方、G4のインデックスなどを用意して投資家以外でも使えるように工夫するとよいでしょう。日本の報告書には必ず存在する特集ページも海外にはほとんどありません。ターゲット向けに情報開示をしていく必要があります。背景や考え方、思いの部分を報告書にまとめ、ESGに関する詳細なデータ等はホームページで開示するなどのすみ分けをしてもいいかもしれません。

■パネルディスカッション
「CSR担当者が考えるステークホルダー視点での情報開示」

 セミナーの後半は、パネルディスカッションを行い、「CSR担当者が考えるステークホルダー視点での情報開示」について議論した。

【パネリスト】
●本木 啓生(株式会社イースクエア代表取締役社長)
●安藤 光展(CSRコンサルタント、CSRのその先へ運営者)
●井手 一代(ヤフー株式会社 社長室 社会貢献本部)
●岩澤 亨(トピー工業株式会社 総務部広報IR担当)

【モデレーター】
●岸本 吉浩(東洋経済新報社『CSR企業総覧』編集長)
=敬称略、社名・役職は2015年9月30日時点

必要な情報を届けるための工夫が必要

 ――非財務情報の開示状況・対象は?

■岩澤:

 1980年代半ばからアニュアルレポートを発行しています。その後電子版になり、さらに統合版で現在の「トピーレポート」という形になっています。Web中心に英語版と日本語版を発行していますが紙でも見ることができます。

 弊社はBtoBのビジネスであり、BtoC企業に比べると取引先や就職希望者も報告の主なターゲットとなります。この1冊で「トピー工業という会社がわかるようにしたい」と思っています。そこで、取引先に対しては事業展開として各事業部の事業とハイライト、新製品新技術を、就職希望者に対しては人事制度を中心に伝えることを考えました。

 もともとアニュアルレポートも出していましたので、投資家への意識も高いと自負しています。事業を継続するための問題点の把握なども行い掲載しています。今年は注目度が高い女性に関する情報も出しました。

■井手:
 弊社は1996年創業で来年2016年で20周年となります。東日本大震災の復興支援等を積極的に行っています。こうしたCSRに関する情報はWebのみで公開しています。
 「未来の従業員」という意味で採用ページにも関連情報を出しています。たとえば、「データで紐解くヤフー」というページでは、「新卒入社者の離職率2.5%」、「産休・育休後復職した割合94.3%」といったデータを掲載しています。 IR等で個人投資家向けのページも作っていますが、サマリー版という形で必要な情報を出しています。

 厳密には集計していませんが、印象としては個人投資家向けのページの読者は年配者が多いようです。Webの事業戦略や広告の仕組みなどはあまり見ていただけないのでわかりやすく簡単に出すようにしています。全体的に比較的幅広いステークホルダーを対象とした開示になっていると思います。

■安藤:
 毎年100~200社の情報を見ていますが、対象読者がわかりにくい会社が多いです。情報を網羅していることがマルチステークホルダー向けであるとは限りません。
 私はノイズと呼んでいますが、見る人によって不要な情報が多くなっています。担当者の手間とお金をかけて情報を出しても実際は見られないことがあるのです。

 想定読者を決めることも重要ですが、そこに本当に届いているかを確認することがより大切です。不要な情報を削除するステップとして、マテリアリティを明確にすることがあげられます。今の報告書作成の流れは「統合」と「細分化」という2つの逆の方向性があります。

 たとえば、前者は会社案内とアニュアルレポートをまとめるような動きです。後者は社内報をベースに「就職案内」を目的として作成するような動きです。画一的でなくニーズにあったものの方がよりステークホルダーにコミットできると思います。
 開示媒体のメインはWebと紙なのは間違いありません。いずれの媒体にしても企業の独り言になってはいけないので、ステークホルダー視点が大切だと思います。

2つのコードが進化のきっかけに

――投資家に対する情報開示・取り組みについてどのように考えていますか?

■岩澤:

 スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの2つのコードが出ましたのでこれらを中心に対応しています。特にコーポレートガバナンス・コードにもある女性や事業のリスクについての情報を報告書に入れ、投資家に役立つ情報にしています。
 今回、役員の経歴等は社外監査役なども入れました。また、ホームページでは株主向けにバーチャル工場見学として動画コンテンツを入れるなどの工夫もしています。

 ただ、現状はESGに関する情報について記者やアナリストから聞かれることはあまりありません。業績や財務情報が中心です。しかし、2つのコードは進化のきっかけになるような気がします。これまで社内は「法律を守ればよい」という意識が強かったのですが、コーポレートガバナンス報告書などで少しずつ社員同士で議論する機会も増えたように思います。

■井手:
 機関投資家向けには四半期ごとに説明会を開催しています。そこで質疑応答の場も設け、動画での配信も行っています。必要な情報発信については対応できているのではないかと考えています。
 一方でこれまであまりできていなかった個人投資家向けも最近少しずつ行うようになってきています。IR担当者の話ではCSR情報についての関心は比較的高く、質問も多いようです。
 
 ただ、情報開示については多少偏りがあります。弊社は業種的に水や資源を多く使うわけではないため、環境情報に関する開示は少ないです。開示しているCSR情報についてはIR担当者から「コミュニケーションをとりやすい、説明しやすい」という評価の声も聞いています。投資家やアナリストにもこうしたWebをご覧いただくようにしています。

■安藤:
 現状ではCSR担当者は「株主・投資家向け」という意識があまりないようです。たとえば、CSR報告書の作成会議でIRや広報の担当者が同席していないこともよくあります。IRとコミュニケーションの連携が取れていない会社も多いです。CSRとIRでは「開示対象が違う」という意識が強いように感じます。
 
 他に担当者の異動も多く、それまでのネットワークやNGOとの連携などもが引き継がれていないことが多いです。長くやっている人が異動するとノウハウが拡散する傾向にあります。異動自体は社内が活性化するので悪いことではありませんが、CSR活動は少人数で担当している会社が多く、いきなり異動になるとそこで活動が切れてしまうこともあります。

■本木:
 日本ではIRとCSRの連携は部署間で壁があることが多いです。私が知っている範囲でもIRとCSRが統合され同じ部になってもCSRだけは孤立しているケースをよく見ます。

 私は今後は「企業が株主を選んでいく時代」になると思っています。本音では会社は「長期的に保有してくれる安定的な株主」が欲しいです。たとえば海外では、ユニリーバが「短期間の投資家は不要」と言っています。

 「どのような投資家に保有してほしいかを決めていく」といった話は日本のIRではなかなか決めにくい感じがします。しかし、戦略的に「長期視点」や「ESG視点」を持った投資家がどのくらいの割合必要かといったことを考えるようになれば自然にどのような情報を出していくべきかという話になるはずです。

必要な社内情報は足で稼げ!

――情報を集めるための社内連携の取り組み・課題は? 

■岩澤:
 CSR報告書の記事執筆などをメールだけで依頼してもなかなか受けてもらえません。そのため、書いてほしいときは社内を回って説明します。直接会って話をして、その人から「詳しいことはメールで送ってくれ」と言われればこちらのものです。
 とにかく社内を行ったりきたりして話をします。私は社内報も担当しているので、そこで知り合った人とのネットワークも役に立っています。

 顔をあわせて話をすることで新しい企画を思いつくこともあります。メールでお願いするよりも「フェース・トゥ・フェース」が大切です。それがいい開示につながると思います。

■井手:
 弊社にはCSR推進室などはありませんが、コンプライアンスやリスクマネジメント等もそれぞれの担当部署でうまく運営できています。幸い私はこうした部署の経験もあるので比較的情報を集めやすいようです。

 また、弊社は社内のイントラネットが発達していて、社員だけのチャットツールなどがあり、社内コミュニケーションはとりやすい環境にあると思います。
 「東洋経済のCSR調査票」も活用しています。この調査票を持って各部署に行き、「この数値や情報を教えてください」と聞いています。これでコミュニケーションを取りながら回ることができます

■安藤:
 CSR活動で社内連携がうまくいっている会社は担当者が足で稼いでいるところが多いです。顔が広い、社内の経験が豊富、トップ層にもときどき会える、といった社内のキーパーソンの存在が成功には必要です。もし、担当者がそうでなければ、そのような社内影響力の大きい人を探すことです。そうすれば社内浸透が進むことが多いです。

 ご存知のように世界的なガイドラインが次々とできています。海外はもちろん国内も女性活躍推進法やストレスチェックの義務化といった分野で進んでいます。
 その際、「重要なステークホルダーは誰か?」を真剣に考えることが大切です。ステークホルダーが企業を評価するのであれば、企業はそのステークホルダーと向き合わなければなりません。

 その結果、一番重要なステークホルダーを従業員と判断すれば、そちらを重視した「会社案内」のような形、それが投資家であれば「統合報告」のような形で開示していけばよいCSR報告になると思います。

■本木:
 CSR・ESG情報の開示が重要として認識されている会社では、すでに環境などの情報が上がってくるようなコンピュータ等の仕組みができています。現在ほど「企業価値向上」と「CSRの取り組み向上」の方向性が一致している時代はありません。経営者もこうした活動を理解しやすくなっています。

 トップにきちんと説明をすると必ずわかってもらえます。私は成功するためにIRや広報などと一緒にワークショップを開くことをお勧めします。ゼロベースから考え、「ステークホルダーは誰だろう」、「やる意味は何なんだろう」とみんなで考える。それができれば、必要な情報開示は自然とわかってくると思います。

――どうもありがとうございました。

今回のセミナーを終えて

 近年、上場企業を中心に非財務情報の開示が要求されるケースが増えています。一つがグローバルの要請でもう一つが国内の政府等の要請です。こうした変化の中で、各企業がどのような開示をしていくのかは私たちも注目しながら見ていきたいと思います。


※次回の第7回セミナーは2016年1月21日に開催します。
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